短掌筋

短掌筋は手のひらにある小さな筋肉で、小指球の位置には退化した短掌筋が見られます。短掌筋は手掌腱膜と屈筋腱膜を手の尺側縁の皮膚と結びつけています。これにより、握る動作やつまむ動作をする際に皮膚の動きを制御し、その動作を支援します。神経供給は尺側神経の浅枝(C8、T1)によって行われます。

日本人のからだ(本間敏彦 2000)によると

小指球筋

小指球筋には短掌筋、小指外転筋、短小指屈筋、小指対立筋が含まれます。

短掌筋は小指球の基部の皮下にある皮筋で、人間では退縮的な筋とされていますが、欠損する例は1-2%と非常に少ないです(江口,1962)。支配枝も尺骨神経浅枝の枝が複数に入り、機能的にも不明な点が多い筋です。

小指外転筋は主に豆状骨から、短小指屈筋は屈筋支帯と有鈎骨から起こり、どちらも小指基節骨尺側に停止します。筋腹も癒合する例も多く、起始から全面的に癒合した場合、短小指屈筋の欠損例として報告されていることもあります(佐野,1931)。

小指対立筋は小指中手骨に停止する筋で、小指外転筋、短小指屈筋とは癒合せず、独立して存在します。

小指外転筋、短小指屈筋、小指対立筋の3筋は尺骨神経深枝から順次支配枝を受けます。小指外転筋と短小指屈筋は筋腹で癒合することが多く、それぞれの支配枝も筋内で交通し合っています。それぞれの小指球筋へ向かう支配枝の尺骨神経からの分岐パターンも定まっています(図47)(Homma and Sakai, 1992)。

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図47 小指球筋の支配神経の分岐パターン(Homma and Sakai,1992)

図47 小指球筋の支配神経の分岐パターン

U: 尺骨神経深枝, 1: 小指外転筋, 2: 短小指屈筋, 3: 小指対立筋