陰核提靱帯 Ligamentum suspensorium clitoridis♀

概要

陰核提靱帯は、女性の外性器の重要な支持構造であり、陰核を恥骨結合に固定する役割を持つ結合組織の帯です。解剖学的には、浅腹筋膜(Fascia abdominalis superficialis)の正中下端部が靱帯化したもので、陰核脚(Crus clitoridis)の深部に位置しています(Moore et al., 2018)。起始部は恥骨結合の前面で、そこから下方へ伸びて陰核体(Corpus clitoridis)の基部背側面に付着します。

組織学的特徴

組織学的には、この靱帯は主に密な不規則結合組織から構成され、弾性線維と膠原線維が豊富に含まれています(Standring, 2020)。女性では男性の陰茎提靱帯(Ligamentum suspensorium penis)と相同の構造ですが、比較的発達が弱く、強度も劣ります。

臨床的意義

臨床的意義としては、会陰部の外傷や産科手術によって損傷を受ける可能性があり、陰核の位置異常や支持機能の低下を引き起こすことがあります(O'Connell et al., 2005)。また、形成外科的な性別適合手術において、この靱帯の処理が重要となります(Bizic et al., 2018)。さらに、骨盤底筋群の機能不全を伴う場合、陰核提靱帯への負担が増加し、慢性的な会陰部痛の原因となることがあります(Vancaillie et al., 2012)。

参考文献

J799.png

J0799 (女性の前庭球と尿生殖三角:下方からの図)