内腹斜筋

日本人のからだ(宮内亮輔・長島聖司・小川皓一・坂本裕和 2000)によると

内腹斜筋は、腰筋膜、腸骨稜の中間線の前部2/3、鼡径靭帯の外側2/3から始まります。筋線維束の上部は最下位の3本の肋骨の軟骨に、残りは第10肋骨につながる腱膜に広がり、腹部の中央線で白線を形成します。この筋肉は、腹部を圧縮し、内臓を保護し、強い呼気の際に活動します。神経供給は、下部6本の胸神経と上部2本の腰神経の前枝、腸骨下腹神経、腸骨鼡径神経からの枝です。血流供給は、上および下腹壁動脈と深腸骨回旋動脈の筋枝から受けます。

内腹斜筋の腱膜の線維は、白線で外腹斜筋の腱膜の線維と交織し、反対側の外腹斜筋の腱膜に連続します。これにより、腹壁を斜めに取り巻く一続きの筋腱性の帯が形成され、両側の2つの斜筋は1つの運動単位として結ばれます。

内腹斜筋の筋線維束は急角度で上昇し、第10-12肋骨の下縁に筋性停止します。これらの筋束は頭側では明確な境界なしに内肋間筋に連続しています。腹側で起こる内腹斜筋の筋線維束は、上に向かう角度がゆるやかで、上前腸骨棘から起こる筋線維束はほぼ水平、鼡径靭帯から起こる筋線維束は斜め下方へ進みます。

尾側部では、内腹斜筋を腹横筋から区別することが非常に難しい。2つの筋を頭側で隔てている結合組織層の中を神経が走り、上前腸骨棘の高さで終わり、腸骨下腹神経の前皮枝と腸骨鼡径神経は、内腹斜筋の腹側面を走ります。

外腹斜筋に覆われている内腹斜筋は、腰腱膜、腸骨稜中間線の前方2/3部および鼡径靭帯外側2/3部から始まり、筋板を形成し、前方へ扇状に広がります。最上部の筋線維は上内側へ走り、第8から第12肋骨の下縁に停止します。通常は第10から第12肋骨(65.7%)に停止し、他の例の大部分は第9から第12肋骨(33.3%)に停止します(表40)。中央の大部分の筋線維は上内側へ走り、腱膜に移行して胸骨剣状突起と恥骨結合の間で白線に停止します。最下部の筋線維(鼡径靭帯の外側部から始まる)は下内側へ走り、扁平な短い腱に移行して恥骨櫛に停止します。

第10および第11肋骨につく筋束は同じ高さの内肋間筋と密に隣接し、両筋は一続きのような姿勢をとります。腸骨稜からの筋質部は外腹斜筋より後方に及んでいるため、腰三角の床は内腹斜筋で作られます。また、内腹斜筋の後縁は前外側に斜走するので、固有背筋外側縁との間隔は上行するにつれて次第に大きくなり、第12肋骨、内腹斜筋後縁と固有背筋外側縁とで囲まれた領域は三角形を示し、上腰三角またはGrynfeltt三角と呼ばれます。この領域の表面を覆うのは広背筋だけで、腎への到達路として重要です。

肋骨より浅層の外腹斜筋や深層の腹横筋に比べ、内腹斜筋の筋質部の上限は第10肋骨付近で腱膜性に終わっているため、支配神経はT10-L1の狭い範囲に制限され、T11、T12の分布域が広い(坂本、1989)。本筋の支配枝は肋間神経外側皮枝が主幹から分かれる付近、またはそれより遠位で始まります。

表40 内腹斜筋の停止する最上位肋骨(%)

表40 内腹斜筋の停止する最上位肋骨(%)

成人 日本人胎児
Mori(1964) 米倉(1954) 菊池(1986)
停止最上限 左側
第8肋骨 - - - 2(2.0) -
第9肋骨 68(34.0) 72(36.0) 140(35.0) 40(40.0) -
第10肋骨 132(66.0) 128(64.0) 260(65.0) 55(55.0) 40(100.0)
第11肋骨 - - - 3(3.0) -
200(100.0) 200(100.0) 400(100.0) 100(100.0) 40(100.0)