大動脈裂孔

大動脈裂孔は、横隔膜の腰椎部における左右の脚間に存在する開口部です。以下にその主な特徴をまとめます:

大動脈裂孔は、胸腔と腹腔を結ぶ重要な通路です。その解剖学的位置と通過する構造物の理解は、臨床的にも重要な意義を持ちます。

J433.png

J0433 (横隔膜:腹腔からの図)

日本人のからだ(宮内亮輔・長島聖司・小川皓一2000)によると

第12胸椎の椎体前に位置する大動脈裂孔は、横隔膜の腰椎部の左右の脚間に存在します。この裂孔は胸大動脈などの血管、交感神経叢(大動脈神経叢)、奇静脈、胸管を通します。

(1) 食道裂孔と大動脈裂孔との相互位置関係

食道裂孔と大動脈裂孔の相互位置関係について、日本人成人と胎児では、食道裂孔が大動脈裂孔の左側にある型、食道裂孔と大動脈裂孔が同一矢状面に存在する型、そして食道裂孔が大動脈裂孔の右側にある型の3型に分類できます(表29) (池本, 1931; 櫛田, 1941; 宮田, 1946)。これら3型の出現頻度については、報告により差異が見られますが、食道裂孔が大動脈裂孔の左側に位置する型が最も多く見られます。

表29 横隔膜の食道裂孔と大動脈裂孔との相互位置関係(%)

表29 横隔膜の食道裂孔と大動脈裂孔との相互位置関係(%)

池本(1931) 櫛田(1941) 宮田(1946)
日本人成人 日本人胎児 日本人成人
食道裂孔に対する大動脈裂孔の位置関係 男性 女性 男性 女性 男性 女性
左側 22(47.8) 8(47.1) 30(47.6) 43(74.1) 34(81.0) 77(77.0) 24(72.7) 14(63.6) 38(69.1)
同矢状面 6(13.0) 1(5.9) 7(11.1) 14(24.1) 8(19.0) 22(22.0) 4(12.1) 5(22.7) 9(16.4)
右側 18(39.1) 8(47.1) 26(41.3) 1(1.0) - 1(1.0) 5(15.2) 3(13.7) 8(14.5)
46 (100.0) 17 (100.0) 63 (100.0) 58 (100.0) 42 (100.0) 100 (100.0) 33 (100.0) 22 (100.0) 55 (100.0)