大動脈裂孔

日本人のからだ(宮内亮輔・長島聖司・小川皓一2000)によると

第12胸椎の椎体前に位置する大動脈裂孔は、横隔膜の腰椎部の左右の脚間に存在します。この裂孔は胸大動脈などの血管、交感神経叢(大動脈神経叢)、奇静脈、胸管を通します。

(1) 食道裂孔と大動脈裂孔との相互位置関係

食道裂孔と大動脈裂孔の相互位置関係について、日本人成人と胎児では、食道裂孔が大動脈裂孔の左側にある型、食道裂孔と大動脈裂孔が同一矢状面に存在する型、そして食道裂孔が大動脈裂孔の右側にある型の3型に分類できます(表29) (池本, 1931; 櫛田, 1941; 宮田, 1946)。これら3型の出現頻度については、報告により差異が見られますが、食道裂孔が大動脈裂孔の左側に位置する型が最も多く見られます。

表29 横隔膜の食道裂孔と大動脈裂孔との相互位置関係(%)

表29 横隔膜の食道裂孔と大動脈裂孔との相互位置関係(%)

池本(1931) 櫛田(1941) 宮田(1946)
日本人成人 日本人胎児 日本人成人
食道裂孔に対する大動脈裂孔の位置関係 男性 女性 男性 女性 男性 女性
左側 22(47.8) 8(47.1) 30(47.6) 43(74.1) 34(81.0) 77(77.0) 24(72.7) 14(63.6) 38(69.1)
同矢状面 6(13.0) 1(5.9) 7(11.1) 14(24.1) 8(19.0) 22(22.0) 4(12.1) 5(22.7) 9(16.4)
右側 18(39.1) 8(47.1) 26(41.3) 1(1.0) - 1(1.0) 5(15.2) 3(13.7) 8(14.5)
46 (100.0) 17 (100.0) 63 (100.0) 58 (100.0) 42 (100.0) 100 (100.0) 33 (100.0) 22 (100.0) 55 (100.0)

(2) 食道裂孔と大動脈裂孔の正中線に対する位置関係

食道裂孔と大動脈裂孔の正中線に対する位置関係については、次の7型が見られます。A型が最も多く見られました(表30) (池本, 1931; 櫛田, 1941; 宮田, 1946)。

A型:両孔がともに正中線より左側にある。

B型:大動脈裂孔が正中線上にあり、食道裂孔が正中線より左側にある。

C型:両孔がともに正中線上にある。

D型:食道裂孔が正中線上にあり、大動脈裂孔が正中線の左側にある。

E型:食道裂孔が正中線上にあり、大動脈裂孔が正中線の右側にある。