腰椎部(横隔膜の)

横隔膜の腰椎体からの起始点は、腰椎部と呼ばれ、左右2本の脚で構成されています。左脚は第1~第3腰椎体から、右脚は第1~第4腰椎体から、椎体の前面にある前縦靭帯に密着して、腱様に上方に向かって伸びています。

日本人のからだ(宮内亮輔・長島聖司・小川皓一2000)によると

腰椎部の内側脚

内側脚の腰椎からの起始部は二分あるいは三分し、2-3の腱から構成される例があります。右側では、内側脚は主に2つの腱からなります。一方、左側では、内側脚は単腱または2つの腱からなる例が多い(表31) (島田,1952 b; 加々野,1960)。

多くの解剖学書では内側脚を貫く大内臓神経と交感神経幹の位置を境に、内側(小)脚、中間(小)脚、外側(小)脚と分けることが記載されています。しかし、内側脚の腱構成とこれらの神経の貫通部位とは必ずしも関連がないとされています(加々野,1960)。成人(宮田,1946)では、右側内側脚の起始部は第3腰椎椎体の上1/3から第5腰椎の上1/3にわたり、平均すると第3および第4腰椎間椎間円板の高さになるとされています。また、左側内側脚の起始は第1腰椎椎体の下1/3から第4腰椎椎体の上1/3までにわたり、平均すると第2および第3腰椎間椎間円板の高さになるとされています。よって左側の内側脚起始部は、右側のそれに比べて1椎骨高だけ高位に位置することになります。

一方、胎児(櫛田,1941)では、右側内側脚の起始は第1腰椎椎体の中1/3から第4腰椎椎体の上1/3にわたり、平均すると第2および第3腰椎間椎間円板の高さになるとされています。左側内側脚の起始は第1腰椎椎体の上1/3から第4腰椎椎体の上1/3にわたり、平均すると第2腰椎椎体の中1/3の下縁の高さになるとされています。よって胎児では、左側内側脚の起始部は右側のそれに比べてわずかに1/3椎骨高ほど高位に位置するに過ぎません。

内側脚が内側(小)脚、中間(小)脚、外側(小)脚に分裂する例では、中間および外側(小)脚の起始部は内側(小)脚のそれより一般に2/3椎骨高ほど高位にあるとされています(加々野,1960)。

表31 成人および胎児の横隔膜の腰椎部内側脚の起始腱の形態

表31 成人および胎児の横隔膜の腰椎部内側脚の起始腱の形態

加々野(1960) 島田(1952b) 加々野(1960)
内側脚の腱構成 日本人成人 日本人胎児 日本人胎児
右側 単腱 10(29.4) 18(18.0) 13(46.3)
2〃 22(64.7) 60(60.0) 15(53.7)
3〃 2(5.9) 22(22.0) -
34(100.0) 100(100.0) 28(100.0)
左側 単腱 15(44.1) 26(26.0) 20(71.4)
2〃 17(50.0) 49(49.0) 6(21.4)
3〃 2(5.9) 25(25.0) 2(7.1)
34(100.0) 100(100.0) 28(100.0)