短肋骨挙筋 Musculi levatores costarum breves

短肋骨挙筋は第7頸椎から第11胸椎の横突起から起始し、その直下の肋骨(第1-12肋骨)の肋骨角の外側縁に停止する筋肉です(Standring, 2015)。解剖学的には脊柱起立筋群の深層に位置し、12対存在します。各筋は扇状の形態を示し、横突起から外下方に走行します(Standring, 2015)。

J459.png

J0459 (短い背筋(第3層):背面図)

解剖学的構造

構造的には、各短肋骨挙筋は単一の分節筋(segmental muscle)であり、隣接する脊椎と肋骨を連結します(Moore et al., 2018)。筋線維の走行は後外側下方向です。内側部は椎間関節包と連続し、外側部は外肋間筋と連続しています(Netter, 2019)。

筋の長さは約4-6cmで、幅は約1-2cmです(Drake et al., 2020)。筋束は比較的均一な配列を示し、筋線維の方向は横突起から肋骨に向かって約45度の角度で走行します(Drake et al., 2020)。組織学的には、type I線維とtype II線維の混合型を示し、持久的な姿勢保持と瞬発的な呼吸補助の両方に適応しています(Bordoni et al., 2020)。

機能

機能的には、両側が同時に収縮すると脊柱を伸展させ、片側が収縮すると脊柱を同側に側屈させます(Neumann, 2017)。また、肋骨を挙上させることで吸気補助筋としても機能します。特に深呼吸時や咳嗽時に活動が増加します(Bordoni et al., 2020)。

筋電図研究によると、短肋骨挙筋は安静呼吸時にはほとんど活動しませんが、努力性吸気時には有意な筋活動を示します(De Troyer and Estenne, 1984)。また、体幹の回旋運動や側屈運動時にも姿勢安定化筋として機能します(McGill et al., 2003)。

臨床的意義

臨床的には、胸背部痛や肋間神経痛の原因となることがあります。過度の緊張は呼吸制限や姿勢異常につながる可能性があり、理学療法の対象となることがあります(Kendall et al., 2014)。また、胸郭出口症候群の病態にも関与する場合があります(Povlsen et al., 2018)。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者では、短肋骨挙筋の過活動や肥大が認められることがあり、これは呼吸補助筋としての代償的な役割の増大を反映しています(Orozco-Levi, 2003)。また、脊柱側弯症患者では、凸側と凹側で筋の緊張度や長さに非対称性が生じ、これが変形の進行に関与する可能性が指摘されています(Mehnert et al., 2005)。

外傷や手術による短肋骨挙筋の損傷は、呼吸機能の低下や胸郭運動の制限を引き起こす可能性があります。リハビリテーションでは、ストレッチング、筋力強化、呼吸訓練などが有効とされています(Kisner and Colby, 2017)。

神経支配と血液供給

神経支配は脊髄神経後枝の外側枝により支配されます(Standring, 2015)。各短肋骨挙筋は対応する脊髄神経レベルの後枝から神経支配を受けます。血液供給は肋間動脈の後枝および椎骨動脈の分枝である深頸動脈から得ています(Drake et al., 2020)。

静脈還流は対応する肋間静脈を経由して奇静脈系または椎骨静脈叢に流入します。リンパ排液は傍脊柱リンパ節を経由して胸管または右リンパ本幹に至ります(Moore et al., 2018)。

参考文献