肋骨挙筋 Musculi levatores costarum
肋骨挙筋は、12対あり、脊柱の回旋や側屈、呼吸補助に寄与する筋肉です。第7頚椎および上位11個の胸椎の横突起から起始し、下の肋骨に付着します。神経支配は胸神経の前枝によるもので、血液供給は肋間動脈から行われます。短肋骨挙筋と長肋骨挙筋に分類され、呼吸運動や脊柱運動に重要な役割を果たします。筋筋膜性疼痛や呼吸器症状との関連があり、評価や介入には解剖学的理解が必要です。
解剖学的構造(位置・起始停止・層構造)
- 位置:肋骨挙筋は、頚胸移行部から上部胸郭の後外側で、脊柱起立筋群の深層に位置する小筋群である(Standring, 2021)。
- 分類:一般に**短肋骨挙筋(levatores costarum breves)と長肋骨挙筋(levatores costarum longi)**に区別される(Moore et al., 2023)。
- 起始:第7頚椎から第11胸椎までの横突起(Standring, 2021)。
- 停止:
- 短肋骨挙筋:起始椎の1つ下の肋骨の肋骨角付近(肋骨頚部〜肋骨角の間)に付着(Standring, 2021)。
- 長肋骨挙筋:主として上位胸椎(概ねT7〜T11付近)から起こり、2つ下の肋骨に付着し、より急峻に走行する(Standring, 2021)。
- 層構造と隣接関係:
- 後方には脊柱起立筋群が位置し、前方(深部)には肋骨・肋横突関節周囲の靱帯群、さらに深部で胸膜(壁側胸膜)へ連続する領域が近接する(Standring, 2021)。
- 肋骨挙筋は外肋間筋との連続性が指摘され、肋間筋群との発生学的・機能的関連が論じられている(Standring, 2021)。
神経・血管(支配と走行の要点)
- 神経支配:胸神経の前枝(肋間神経)およびその筋枝により支配される(Moore et al., 2023)。
- 血管:主として後肋間動脈(胸大動脈からの分枝)およびその背側枝・筋枝から供給される(Moore et al., 2023)。
機能(呼吸運動と脊柱運動)
- 肋骨の挙上:肋骨角近傍に付着するため、収縮により上位肋骨を挙上し、特に吸気の補助として作用し得る(Moore et al., 2023)。
- 脊柱運動:横突起と肋骨を連結する配置から、胸椎の回旋・側屈に小さく寄与する(Standring, 2021)。
臨床的意義(評価・関連痛・手技上の注意)
- 筋筋膜性疼痛(胸背部痛):胸椎傍の深層筋であり、過負荷や姿勢要因で筋緊張が持続すると、胸背部の局所痛や圧痛点の形成に関与し得る。深層筋のため、表層筋(僧帽筋・菱形筋など)との鑑別と触診の工夫が必要になる(Travell & Simons, 1999)。
- 呼吸器症状との関連:肋骨挙上に関与するため、胸郭の可動性低下や疼痛が吸気のしづらさを助長することがある。胸郭運動の評価では、肋骨挙筋を含む傍脊柱筋群の緊張・可動性を併せて考えると解釈が明確になる(Moore et al., 2023)。
- 画像・解剖の読影補助:CTやMRIで肋横突関節周囲を評価する際、傍脊柱の小筋群として認識しておくと、炎症・腫瘤・術後変化の局在理解に役立つ(Standring, 2021)。
- 介入手技(例:傍脊柱ブロック、鍼、深部手技):胸椎傍で深部に位置し、近傍に肋間神経・後肋間血管、さらに胸膜が存在するため、深部への刺入や針操作では解剖学的深度と方向の理解が重要である(Moore et al., 2023)。
参考文献(Harvard)