肩甲挙筋

肩甲挙筋は、頚部と肩甲骨を結ぶ重要な筋肉です。以下にその主な特徴をまとめます:

肩甲挙筋は、その名が示すとおり、主に肩甲骨を挙上する機能を担っています。

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J0164 (右肩甲骨、筋の起こる所と着く所:前面からの図)

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J0609 (頚部の深部静脈:右側からの図)

日本人のからだ(堀口正治 2000)によると

肩甲挙筋は、上位4つの頚椎の横突起を起点とし、細い筋繊維として見えます。これは肩甲骨の上部角と肩甲棘よりも上部の肩甲骨の内側縁に付着します。

肩甲挙筋は、環椎から第2から第6の頚椎横突起後結節に起始します。下限は第4頚椎で、これが約半数を占め、第3頚椎が約3割、第2と第5頚椎が約1割ずつで、第6頚椎は少ない(Nishi, 1953 b)です。これら2-6個の筋尖は、集束しながら後下方に向かい、胸鎖乳突筋の深部を横切り、僧帽筋の深部まで進みます。

環椎からの起始は、3.5%の頻度で欠如し、乳様突起からの過剰束は、3.1%に出現します(Nishi,1953 b)。まれに後頭骨に起始する筋束は、後頭肩甲筋と呼ばれます(山崎ら.1982)。

本筋は肩甲骨上角とそれに続く内側縁上部に停止します。停止の変異には、背側迷束と腹側迷束とが区別されます(図2)。背側迷束には後頭肩甲筋も含まれますが、一般的なのは環椎から生じる第1筋束の一部が菱形筋の深部へ進み、上後鋸筋の表面で下部頚椎から上部胸椎の棘突起に停止する菱形載域筋M. rhomboatloideusである(8.6%,山崎ら.1982)。腹側迷束は32.3%に出現し、下位の単数または複数の筋尖の一部または全部が前鋸筋の上縁または内面の筋膜に停止したり、第1または第2肋骨に停止します(Nishi, 1953 b)。肋骨に停止する場合には、後斜角筋との区別が困難です。

背側迷束と腹側迷束には、起始または停止だけの異常のほかに、まれに起始と停止の両方に異常が出現する場合があります。背側迷束に属するものとしては、六反田ら(1975)および手塚ら(1979)が報告した、後頭骨上項線から生じて上後鋸筋の起始腱に停止する筋束があります。また、腹側迷束に属するものとしては、六反田ら(1975)および木田ら(1990)が報告した、第2(および第3)肋骨から生じて肩甲骨内側縁に停止する筋束が挙げられます。