浅葉(頚筋膜の)Lamina superficialis (Fasciae cervicalis)
頚筋膜の浅葉(investing layer of cervical fascia)は、頚部における最も表層の深筋膜であり、頚部の構造的支持と区画化に重要な役割を果たす結合組織層です (Standring, 2021)。この筋膜は、頚部全体を取り囲む円筒状の構造を形成し、複数の重要な解剖学的構造を包含しています (Moore et al., 2023)。

J0416 (右側の広頚筋:腹方からの図)

J0426 (頭側から見た気管始部を通る頚部の断面図)
1. 解剖学的特徴
1.1 位置関係と層構造
頚筋膜の浅葉は、頚筋膜系の3層構造(浅葉、気管前葉、椎前葉)の中で最も表層に位置します (Standring, 2021)。この層は以下の位置関係を示します:
- 浅層境界:皮下脂肪層(superficial cervical fascia)と広頚筋(platysma)の直下に位置し、これらの構造とは疎性結合組織により分離されています (Drake et al., 2020)。
- 深層境界:胸鎖乳突筋(sternocleidomastoid muscle)、僧帽筋(trapezius muscle)、舌骨下筋群(infrahyoid muscles)などの頚部表層筋群を被包し、これらの筋の筋外膜(epimysium)と癒合します (Netter, 2022)。
- 内側関係:正中線において左右の筋膜が癒合し、頚部の中央部を形成します (Sinnatamby, 2022)。
1.2 付着部と連続性
頚筋膜の浅葉は、頚部の周囲において複数の骨性ランドマークに付着し、周囲の筋膜構造と連続性を持ちます (Standring, 2021):
上方の付着と連続
- 下顎骨下縁(inferior border of mandible):筋膜は下顎骨の下縁に強固に付着し、顎下部の筋膜区画を形成します (Moore et al., 2023)。
- 乳様突起(mastoid process):側頭骨の乳様突起に付着し、胸鎖乳突筋の起始部を固定します (Drake et al., 2020)。
- 外後頭隆起(external occipital protuberance)と上項線(superior nuchal line):後頚部において頭蓋底に付着します (Standring, 2021)。
- 顔面筋膜との連続:上方では咬筋筋膜(masseteric fascia)および耳下腺筋膜(parotid fascia)と連続し、顔面の筋膜系と一体化します (Netter, 2022)。
下方の付着と連続
- 鎖骨(clavicle):鎖骨の前面と上縁に付着し、鎖骨上窩(supraclavicular fossa)の境界を形成します (Moore et al., 2023)。
- 胸骨柄(manubrium sterni):胸骨柄の上縁と前面に付着します (Drake et al., 2020)。
- 肩甲棘(spine of scapula):後方では肩甲骨の肩甲棘に付着します (Standring, 2021)。