オトガイ横筋 Musculus transversus menti
オトガイ横筋は顔面表情筋群に属する小さな筋肉で、口角下制筋の深層に位置し、オトガイ部を横断する不規則な筋束として存在します(Standring, 2015; Gray, 2020)。この筋肉は個人差が大きく、発達が不十分な場合や完全に欠如する場合もあります(Pessa et al., 2012)。

J0405 (頭部の浅層筋:少し右側からの図)

J0416 (右側の広頚筋:腹方からの図)
解剖学的特徴
起始と停止
- 起始:左右の口角下制筋(musculus depressor anguli oris)のオトガイ部における外側縁および深層筋膜(Netter, 2018; Hur et al., 2013)
- 停止:対側の口角下制筋のオトガイ部外側縁、あるいは正中線付近の皮下組織(Iwanaga et al., 2021)
走行と構造
- オトガイ部の下方を左右に横断する不規則な筋束群として走行し、皮下組織および広頚筋(platysma)の深層に位置します(Standring, 2015)
- 筋束は水平方向に配列し、左右の口角下制筋を連結する形態をとります(Hur et al., 2013)
- 広頚筋と密接な解剖学的連続性を持ち、両者は機能的にも協調して作用します(Mendelson et al., 2008)
神経支配
- 顔面神経(第VII脳神経、nervus facialis)の下顎縁枝(ramus marginalis mandibulae)により支配されます(Gray, 2020)
- 下顎縁枝は下顎骨の下縁に沿って走行するため、外科手術時には神経損傷のリスクに注意が必要です(Carruthers et al., 2017)
血液供給
- 主に顔面動脈(arteria facialis)の分枝であるオトガイ動脈(arteria mentalis)から血液供給を受けます(Pessa et al., 2012)
- 副次的に下唇動脈(arteria labialis inferior)からも栄養を受けることがあります(Standring, 2015)
機能
主要機能
- オトガイ部の皮膚を側方および下方に引っ張り、オトガイ部の横方向のしわ(横紋)を形成します(Gray, 2020)