上耳介筋 Musculus auricularis superior
上耳介筋は頭部の筋肉で、耳介の動きに関与する筋肉群(耳介筋)の一つです。解剖学的および臨床的な観点から以下の特徴を持ちます(Gray, 2020; Moore et al., 2022):
解剖学的特徴
- 起始:帽状腱膜(ガレア腱膜)の中央部の側縁から起こります(Standring, 2021)
- 停止:耳介軟骨の上部に付着します
- 神経支配:顔面神経(第VII脳神経)の後耳介枝によって支配されています(Drake et al., 2019)
- 形態:扁平な薄い筋肉で、通常は約2〜3cmの長さがあります
- 位置関係:側頭部から耳介上部に向かって走行しています
機能的特徴
- 耳介を上方および後方に引き上げる機能があります(Netter, 2023)
- ヒトでは他の耳介筋(前耳介筋、後耳介筋)と同様に退化しており、随意的にほとんど動かすことができません
- 耳介の形と位置を維持する静的な役割を担っています
- 情動反応(驚き、恐怖など)の際に不随意的に収縮することがあります(Shimada et al., 2018)
進化的・比較解剖学的観点
上耳介筋は、動物(特に哺乳類)では外耳の動きをコントロールする重要な役割を果たしますが、ヒトでは直立二足歩行への適応と共に機能的意義が低下しています(Lieberman, 2021)。これは聴覚の方向性よりも視覚に依存するようになった進化的変化を反映しています。
臨床的意義
- 顔面神経麻痺の評価:顔面神経損傷の評価において、耳介筋の機能も検査されることがあります(Baugh et al., 2020)
- 耳介形成術:耳の形成手術において考慮される解剖学的構造の一つです
- 筋電図検査:顔面筋の評価の一環として検査されることがあります
- 側頭部手術:側頭部の外科的アプローチにおいて考慮すべき構造です(Tubbs et al., 2019)