紡錘状筋 Musculus fusiformis
紡錘状筋は、筋線維が平行に配列し、中央部が太く膨隆し両端に向かって細くなる紡錘形の形態を呈する骨格筋です。この特徴的な形状により、筋の効率的な収縮と力の伝達が可能となります(Standring, 2020; Moore et al., 2018)。

J0395-0401 (筋の形状)
形態学的特徴
紡錘状筋の基本的な構造は以下の特徴を有します:
- 筋腹(Muscle belly): 中央部が最も太く、筋線維が密に集まっています。この部分が収縮時に最も顕著に膨隆します(Drake et al., 2019)。
- 筋線維配列: 長い筋線維が筋の長軸に平行に配列し、腱に向かって収束します。この配列により、筋の全長にわたって効率的な力の伝達が可能です(Lieber, 2010)。
- 腱(Tendon): 両端に腱を有し、これを介して骨に付着します。紡錘状筋の腱は比較的短いことが特徴です(Platzer, 2014)。
- 筋周膜(Perimysium)と筋内膜(Endomysium): 筋束と個々の筋線維を包む結合組織が発達しており、筋の機械的強度と形態維持に寄与します(Purslow, 2010)。
生体力学的特性
紡錘状筋の生体力学的特性は、その形態と筋線維配列に密接に関連しています:
- 収縮距離: 筋線維が長軸方向に配列しているため、大きな収縮距離を得ることができます。これにより、関節の広範囲な運動が可能となります(Lieber and Fridén, 2000)。
- 収縮速度: 平行配列の筋線維により、速い収縮速度を実現できます(Herzog, 2017)。
- 発揮張力: 生理学的横断面積(PCSA: Physiological Cross-Sectional Area)が比較的小さいため、羽状筋と比較すると単位面積あたりの発揮張力は小さくなります(Lieber and Ward, 2011)。
- 効率性: 筋線維が腱に対して平行に配列しているため、収縮時のエネルギー効率が良好です(Azizi et al., 2008)。
代表例
紡錘状筋の代表的な例として以下が挙げられます:
- 上腕二頭筋(Biceps brachii): 前腕の屈曲と回外に関与する典型的な紡錘状筋です(Netter, 2018)。
- 腓腹筋(Gastrocnemius): 下腿三頭筋の一部を構成し、足関節の底屈に重要な役割を果たします(Moore et al., 2018)。