閉鎖膜 Membrana obturatoria
閉鎖膜は、骨盤の解剖学的構造において重要な役割を果たす膜状組織です。以下に詳細な解剖学的特徴と臨床的意義を示します(Gray et al., 2020; Standring, 2021):
1. 解剖学的特徴
1.1 定義と位置:
- 閉鎖孔(foramen obturatum)の大部分を覆う強靱な線維性膜で、閉鎖管(canalis obturatorius)を除く領域を閉鎖します(Moore et al., 2018)。
- 恥骨と坐骨によって形成される閉鎖孔の周囲の骨縁から起始し、孔を内側から埋めています(Netter, 2019)。
- 閉鎖管は閉鎖膜の上部に位置し、閉鎖血管・神経束の通路となります(Drake et al., 2020)。
1.2 構造と組織学:
- 主に横走する密な膠原線維束で構成され、その厚さは部位によって異なります(Standring, 2021)。
- 外側部分は内側部分よりも厚く、強靱な構造を持ちます(Gray et al., 2020)。
- 組織学的には緻密な線維性結合組織で構成されています(Ross and Pawlina, 2016)。
1.3 機能と関連構造:
- 内閉鎖筋(m. obturatorius internus)と外閉鎖筋(m. obturatorius externus)の起始部となります(Moore et al., 2018)。
- 内側面は内閉鎖筋の、外側面は外閉鎖筋の起始部を形成します(Netter, 2019)。
- 閉鎖動脈(a. obturatoria)、閉鎖静脈(v. obturatoria)、閉鎖神経(n. obturatorius)が閉鎖管を通過します(Drake et al., 2020)。
2. 臨床的意義
閉鎖膜は以下のような臨床的重要性を持ちます(Williams and Warwick, 2019; Malanga and Mautner, 2017):
- 閉鎖ヘルニア:閉鎖管を通じて腹部内容物(主に小腸)が脱出する比較的稀なヘルニアで、高齢女性に多く見られます(Campanelli et al., 2017)。
- 閉鎖神経障害:閉鎖神経の絞扼により、大腿内側の痛みやしびれ、内転筋の筋力低下などを引き起こすことがあります(Petchprapa et al., 2010)。
- 骨盤底筋群との関係:骨盤底の安定性維持に寄与し、骨盤底筋群の機能不全は尿失禁や骨盤臓器脱などの疾患と関連します(DeLancey, 2016)。