歯肉 Gingiva
歯肉は、口腔粘膜の一部であり、歯を支持する重要な解剖学的構造です。以下に解剖学的特徴と臨床的意義を詳述します(Lindhe and Lang, 2021):
1. 解剖学的特徴
- 構造:重層扁平上皮と下層の結合組織(固有層)からなる密な線維性組織である(Nanci, 2018)。
- 分布:歯槽骨を覆い、歯の頚部(セメントエナメル境)周囲を取り巻いている(Ten Cate et al., 2020)。
- 付着:歯槽骨の骨膜と強固に結合しており、歯肉歯槽線維を介して歯のセメント質にも付着している(Schroeder and Listgarten, 2003)。
- 血液供給:上顎では顎動脈の枝(上歯槽動脈)、下顎では顔面動脈と下歯槽動脈から供給を受ける(Standring, 2020)。
- 神経支配:三叉神経第2枝(上顎歯肉)および第3枝(下顎歯肉)からの知覚神経を受ける(Berkovitz et al., 2017)。
2. 解剖学的区分
歯肉は以下の部位に区分されます(Newman et al., 2018):
- 辺縁歯肉(遊離歯肉):歯の周囲を取り巻く非付着性の部分で、歯肉溝を形成する。
- 付着歯肉:歯槽粘膜と連続し、歯槽骨に強固に付着している部分。
- 歯間乳頭:隣接する歯の間を埋める三角形の歯肉組織。
3. 上皮構造
- 口腔上皮(外縁上皮):口腔に面する側の重層扁平上皮で、通常は角化または錯角化している。厚さは約0.2〜0.3mmである(Avery and Chiego, 2006)。
- 歯肉溝上皮(内縁上皮):歯肉溝を裏打ちする非角化上皮で、歯面に向かって伸び、上皮付着を形成する(Bartold et al., 2000)。
- 接合上皮:歯のエナメル質またはセメント質に直接付着する特殊な上皮組織で、ヘミデスモソームを介して結合する。長さは約1〜2mmである(Bosshardt and Lang, 2005)。
4. 臨床的意義
歯肉は口腔の健康維持に重要な役割を果たしています(Chapple and Genco, 2013):
- バリア機能:口腔内の微生物や異物の侵入を防ぐ物理的バリアとして機能する。