上顎間縫合は、左右の上顎骨の前歯突起(歯槽突起)間に存在する正中縫合で、口蓋正中線上に位置します (Standring, 2015)。この縫合は硬口蓋の最前方部分を構成し、切歯管(incisive canal)の直前方に位置する重要な解剖学的構造です (Netter, 2018)。


J0079 (頭蓋骨、筋の起こる所と着く所を示す:前面からの図)

上顎間縫合は胎生期における顔面突起の癒合過程で形成される重要な構造です (Sadler, 2018)。胎生5週から8週にかけて、内側鼻突起と上顎突起が癒合することで形成され、この過程の異常は正中口唇裂や口蓋裂などの先天異常を引き起こす可能性があります (Jiang et al., 2006)。出生時には明瞭な縫合として存在し、成長に伴って徐々に骨化が進行します (Proffit et al., 2019)。
上顎間縫合は線維性結合組織によって構成される縫合で、中央部には密な膠原線維束が走行し、骨面に向かってシャーピー線維として骨質に埋入しています (Ten Cate, 2013)。縫合内には血管や神経線維が豊富に分布し、骨の成長と改造に重要な役割を果たします。年齢とともに線維性組織が減少し、骨性結合へと移行していきます (Melsen, 1975)。
上顎間縫合は上顎骨の前後方向および横方向の成長において重要な役割を果たします (Enlow and Hans, 2008)。特に乳幼児期から学童期にかけては活発な骨形成が行われ、顔面の正常な発育に寄与します。縫合の閉鎖時期には個人差が大きく、一般的には20歳代から30歳代にかけて徐々に骨性癒合が進行しますが、生涯にわたって完全に癒合しない症例も存在します (Angelieri et al., 2013)。