矢状縫合 Sutura sagittalis
矢状縫合は、頭蓋冠における最も重要な縫合の一つであり、左右の頭頂骨を結合する正中矢状面上の線状構造です。解剖学的および臨床的に多くの意義を持ち、頭蓋骨の成長、頭蓋内病変の評価、神経外科手術において重要なランドマークとなります (Moore et al., 2023; Standring, 2024)。

J0082 (頭蓋骨:上方からの図)

J0083 (頭蓋骨:内側からの図)

J0901 (頭蓋骨、脳膜:脳を通る前頭断面)
解剖学的特徴
位置と走行
- 矢状縫合は頭蓋冠の正中矢状面に位置し、前方の冠状縫合から後方の人字縫合(ラムダ縫合)まで延びています (Standring, 2024)。
- 縫合の長さは成人で約12-13cmに及び、頭蓋冠の縦方向の連結を提供します (Drake et al., 2023)。
- 新生児および乳幼児では、前部に大泉門、後部に小泉門が存在し、矢状縫合と他の縫合との接合部を形成します。
構造的特徴
- 矢状縫合は鋸歯状(serrated)の縫合線を形成し、左右の頭頂骨の辺縁が複雑に嵌合することで強固な結合を実現しています (Standring, 2024)。
- 縫合部は線維性結合組織で満たされており、この組織が頭蓋骨の成長を可能にするとともに、成長完了後は骨化(synostosis)する傾向があります。
- 内面では、上矢状静脈洞が矢状縫合に沿って走行し、硬膜が付着しています。
- 外面では、頭皮と頭蓋骨膜が縫合線上を覆っています。
隣接構造との関係
- 前方:冠状縫合と接合し、ブレグマ(前泉門点)を形成します。
- 後方:人字縫合と接合し、ラムダ(後泉門点)を形成します。
- 内面:上矢状静脈洞、大脳鎌、硬膜が密接に関連しています。
- 外面:帽状腱膜、頭皮の各層が覆っています。
発生学的意義
矢状縫合は胎生期から幼児期にかけて、頭蓋の発達において重要な役割を果たします (Sadler, 2024):