寛骨臼縁 Limbus acetabuli
寛骨臼縁(acetabular margin / limbus acetabuli)は、股関節を構成する寛骨臼の外周縁に位置する線維軟骨性の隆起構造であり、股関節の安定性と機能維持に重要な役割を果たす解剖学的構造です(Gray and Lewis, 2020; Standring, 2021)。

J0212 (右の寛骨:外側からの図)

J0214 (右の寛骨:前下からの図)

J0326 (右側の骨盤の靱帯:後方からの図)

J0379 (右の股関節部:大腿は伸ばされて少し内側に巻かれ、腹背方向からのX線像)
解剖学的構造
肉眼解剖学的特徴
- 寛骨臼(acetabulum)の外周縁を取り囲む線維軟骨性の隆起構造として存在し、寛骨臼の深さを増す役割を担う(Standring, 2021)。
- 形状は完全な円形ではなく、前下方では比較的低く、後上方で最も高く発達しており、全体としてほぼ半円形ないし馬蹄形を呈する(Moore et al., 2019)。
- 下方には寛骨臼切痕(acetabular notch / incisura acetabuli)が存在し、寛骨臼縁の連続性を中断している。この切痕は寛骨臼横靱帯(transverse acetabular ligament)によって橋渡しされる(Drake et al., 2020)。
- 寛骨臼縁の上縁には寛骨臼唇(acetabular labrum)が付着しており、両者は組織学的に連続している(Seldes et al., 2001)。この連続性により、寛骨臼の有効な深さがさらに増加し、大腿骨頭の被覆率が向上する。
- 寛骨臼縁の内側縁は、寛骨臼の関節軟骨面(月状面 / lunate surface)と寛骨臼窩(acetabular fossa)との境界を形成する(Drake et al., 2020)。
組織学的構造
- 寛骨臼縁は主に線維軟骨(fibrocartilage)で構成されており、I型およびII型コラーゲンを含む細胞外マトリックスを有する(Petersen et al., 2003)。
- 線維軟骨の構造により、弾力性と圧縮に対する抵抗性を兼ね備え、荷重伝達と衝撃吸収の両方の機能を果たす(Petersen et al., 2003)。
- 血管分布は比較的乏しく、特に内側部分では血管供給が限られているため、損傷後の治癒能力が制限される(Seldes et al., 2001)。外側部分は比較的血管に富んでおり、関節包からの血管供給を受ける。
- 神経支配は主に股関節を支配する関節枝から供給され、侵害受容器(痛覚受容器)が分布しているため、損傷時には疼痛の原因となる(Ferguson et al., 2003)。
発生学的側面
- 寛骨臼縁は胎生期に寛骨臼の発達過程で形成され、出生後も成長とともに形態変化を続ける。
- 小児期から青年期にかけて、寛骨臼縁の発達が不十分な場合、寛骨臼形成不全(acetabular dysplasia)につながり、将来的な股関節症のリスク因子となる(Ganz et al., 2008)。
機能
股関節の安定化機能