指骨(手の)Ossa digitorum

J0202 (右の第三指の中手骨と指節:手の背面からの図)
解剖学的概要
手の指骨(phalanges)は、手指を構成する長管骨であり、精密な把持運動と触覚機能を可能にする骨格基盤を形成します(Gray, 2020)。各手には14本の指骨が存在し、以下の配列を示します:
- 母指(第1指):基節骨(proximal phalanx)と末節骨(distal phalanx)の2本
- 示指から小指(第2〜5指):基節骨(proximal phalanx)、中節骨(middle phalanx)、末節骨(distal phalanx)の各3本
骨の微細構造
各指骨は以下の3つの主要部位から構成されます(Platzer, 2016; Sobotta, 2019):
- 基部(底)(basis phalangis / base):近位端に位置し、関節面を有します。基節骨の基部は中手骨頭と、中節骨・末節骨の基部はそれぞれ近位の指骨頭と関節を形成します。
- 骨体(corpus phalangis / shaft/body):指骨の中央部で、掌側面は平坦または軽度凹面を呈し、背側面は凸面を示します。骨体は近位から遠位に向かって徐々に細くなります。
- 骨頭(caput phalangis / head):遠位端に位置し、滑車状の関節面を形成します。基節骨と中節骨の骨頭は、それぞれ遠位の指骨との関節面となります。末節骨の遠位端は粗面を呈し、指尖部の軟部組織を支持します。
骨化と発達
指骨の骨化は胎生期に始まり、各指骨に1つの一次骨化中心(骨体)と1つの二次骨化中心(基部)が出現します(Moore et al., 2017)。二次骨化中心は生後2〜3年で出現し、思春期後期(14〜21歳)までに骨端と骨幹が癒合します。この発達過程の理解は、小児の骨折診断や成長障害の評価に重要です。
臨床的意義
指骨は手の機能において以下の重要な役割を果たします(Kapandji, 2019):
- 運動機能:指節間関節(IP関節)と中手指節関節(MP関節)を介して、屈曲・伸展運動を可能にします。母指の2節構造と他指の3節構造の違いは、母指の対立運動という独自の機能に関連しています。
- 把持機能:精密把持(precision grip)と力強把持(power grip)の両方を支え、日常生活動作の90%以上に関与します。
- 感覚機能:末節骨は指尖部の豊富な触覚受容器を支持し、微細な触覚識別を可能にします。
臨床的病態