大菱形骨 Os trapezium
大菱形骨(だいりょうけいこつ、Os trapezium)は、手根骨8個のうち遠位列に位置する骨であり、母指(第一指)の運動において中心的な役割を果たします(Moore et al., 2018)。別名として大多角骨(Os multangulum majus)とも呼ばれます。
解剖学的特徴
位置と配置:
- 手根骨遠位列の最も橈側(母指側)に位置します(Standring, 2020)。
- 近位では舟状骨と、遠位では第一中手骨と関節を形成します(Moore et al., 2018)。
- 内側(尺側)では小菱形骨および第二中手骨基部と隣接します。
形態的特徴:
- 不規則な立方体状の形態を呈し、6つの面を持ちます(Standring, 2020)。
- 遠位面:第一中手骨基部と関節する鞍状関節面(sellae articularis)を形成します。この関節面は、橈尺方向に凹面、掌背方向に凸面を示す特徴的な鞍型形状を持ちます(Netter, 2018)。
- 近位面:舟状骨と関節する凹面状の関節面があります。
- 内側面:前方部は第二中手骨基部と接する小さな関節面を持ち、後方部には小菱形骨と関節する深い凹面があります。
- 掌側面:結節(tuberculum ossis trapezii)と呼ばれる隆起があり、屈筋支帯の橈側付着部となります(Moore et al., 2018)。
関節構成:
- 第一手根中手関節(CM関節):第一中手骨基部との鞍関節で、母指の対立運動を可能にする重要な関節です(Eaton & Littler, 1973)。
- 舟状大菱形関節:近位手根列の舟状骨との関節。
- 大菱形小菱形関節:小菱形骨との関節。
- 大菱形第二中手骨関節:第二中手骨基部との小さな関節面。
臨床的意義
母指CM関節症(変形性母指手根中手関節症):