胸骨端(鎖骨の)Extremitas sternalis claviculae

J0165 (右の鎖骨:上方からの図)

J0166 (右の鎖骨、下方からの図)
解剖学的特徴
鎖骨の胸骨端は、鎖骨の内側端に位置し、胸骨柄の鎖骨切痕と関節を形成する部分です(Standring, 2020)。この部分は鎖骨全体の中で最も太く、プリズム状(角柱状)に膨隆しています。
形態学的特徴:
- 胸骨端の形状は個体差が大きく、楕円形が最も多い(35.8%)(Paraskevas et al., 2008)
- その他の形状:鈍円形(29.7%)、四角形(13.8%)、三角形(10.6%)、円形(9.7%)(Paraskevas et al., 2008)
- 内側面には四角形または楕円形の胸骨関節面(facies articularis sternalis)があり、線維軟骨性の関節円板を介して胸骨の鎖骨切痕と胸鎖関節を形成します(Standring, 2020)
- 関節面は凸状または鞍状で、やや下後方を向いています(Moore et al., 2018)
- 関節面の周囲は粗面となっており、胸鎖関節包と靱帯が付着します(Drake et al., 2019)
骨化と発育:
- 鎖骨は全身の骨の中で最も早く骨化が始まる骨です(胎生5-6週)(Sadler, 2018)
- 胸骨端の二次骨化中心は18-20歳頃に出現し、25歳前後で骨幹と癒合します(Scheuer & Black, 2004)
- この骨化の遅さは法医学的年齢推定に利用されます(Schmeling et al., 2004)
臨床的意義
1. 胸鎖関節脱臼:
- 胸鎖関節は前方脱臼が最も多い(85-90%)が、後方脱臼は生命を脅かす可能性があります(Groh et al., 2011)
- 後方脱臼では、胸骨端が後方に転位し、気管、食道、大血管を圧迫する危険があります(Tepolt et al., 2015)
- 呼吸困難、嚥下困難、血管損傷による血行障害などが生じる可能性があります(Morell & Thyagarajan, 2016)
- 診断にはCTスキャンが有用です(単純X線では評価困難)(Rockwood et al., 2009)