肋骨 Costa; Rib

J0828 (脊椎と筋の断面図)
1. 定義と基本構造
1.1 肋骨の定義
肋骨(Costa)は、肋軟骨(Cartilago costalis)に対する骨性部分を指し、胸郭の主要な骨格構成要素である(Gray and Carter, 2021)。肋骨は胸椎と胸骨の間を連結し、胸腔を形成する弓状の長骨である。
1.2 肋骨の基本構造
典型的な肋骨は以下の3つの主要部分から構成される(Standring, 2020):
- 肋骨頭(Caput costae):後方端に位置し、2つの関節面(facies articularis superior et inferior)を有する。これらは隣接する2つの胸椎体および椎間円板と肋椎関節(Articulatio costovertebralis)を形成する。
- 肋骨頚(Collum costae):肋骨頭と肋骨体の間に位置する狭窄部で、長さは約2.5cmである。頚の後外側には肋骨結節(Tuberculum costae)があり、対応する胸椎横突起と肋横突関節(Articulatio costotransversaria)を形成する。
- 肋骨体(Corpus costae):肋骨の主要部分で、前外側方向に弓状に湾曲する。体の内側面下縁には肋骨溝(Sulcus costae)があり、肋間神経、肋間動脈、肋間静脈(VAN構造)を保護する。
1.3 肋骨角と捻転
肋骨体の後方部には肋骨角(Angulus costae)と呼ばれる屈曲点があり、ここで肋骨の方向が変化する(Moore et al., 2023)。また、肋骨は長軸に沿って捻転しており、この構造が呼吸運動時の効率的な胸郭拡張を可能にする。
2. 肋骨の分類と数的変異
2.1 標準的な分類
肋骨は通常12対(左右合わせて24本)存在し、胸骨との連結様式により3つのグループに分類される(Drake et al., 2019):
- 真性肋骨(Costae verae; True ribs):第1〜7肋骨。各々が独自の肋軟骨を介して胸骨に直接連結する。第1肋骨軟骨は胸骨柄と軟骨結合(synchondrosis)を形成し、第2〜7肋骨軟骨は胸骨体と滑膜性の胸肋関節(Articulationes sternocostales)を形成する。
- 偽性肋骨(Costae spuriae; False ribs):第8〜10肋骨。これらの肋軟骨は胸骨に直接連結せず、上位の肋軟骨に付着して間接的に胸骨と連結する。具体的には、第8肋骨軟骨は第7肋骨軟骨に、第9肋骨軟骨は第8肋骨軟骨に、第10肋骨軟骨は第9肋骨軟骨に融合する。
- 浮遊肋骨(Costae fluctuantes; Floating ribs):第11・12肋骨。前方端が自由であり、肋軟骨を持たないか、極めて短い軟骨片のみを有する。これらは腹壁筋群の起始部を提供する。
2.2 数的変異