乳頭突起(腰椎の)Processus mammillaris (Vertebrae lumbalis)

J0128 (第九胸椎から第二腰椎:右方から、そして少し背面からの図)

J0129 (第3腰椎:上方からの図)
解剖学的特徴
腰椎の乳頭突起は、腰椎の上関節突起の後外側縁に位置する小さな骨性突出構造です。この構造は形態学的には乳頭様の形状を呈することから命名されました(Standring, 2020)。通常、第一腰椎から第五腰椎のすべてに認められ、しばしば第十二胸椎にも存在します。
形態学的詳細:
- 大きさ:長さは約3-5mm、幅は2-4mm程度で、個体差が大きい構造です(Drake et al., 2019)。
- 方向:後外側に向かって突出し、上関節面のすぐ背側に位置します。
- 表面性状:表面は粗造で、筋や靱帯の付着に適した構造となっています。関節軟骨では覆われていません(Ross and Pawlina, 2018)。
- 骨構造:緻密骨の外層と海綿骨の内部構造からなり、機械的負荷に対する抵抗性を有しています。
発生学的背景:
- 乳頭突起は発生学的には胸椎の横突起の後方部分(肋骨突起の基部)の相同構造とされています(Moore et al., 2022)。
- 胸腰椎移行部において、胸椎から腰椎への形態変化の過程で、横突起の後方成分が分離し、乳頭突起として独立した構造を形成します。
- この発生学的理解は、腰椎の変異や移行椎の評価において重要な意義を持ちます。
機能解剖学
筋付着部としての機能:
- 多裂筋(Musculus multifidus):乳頭突起は多裂筋の重要な起始部となります。多裂筋は脊柱の深層安定化筋として、特に分節的な安定性に寄与しています(Neumann, 2019)。
- 回旋筋(Musculi rotatores):短回旋筋と長回旋筋の起始部としても機能し、脊柱の回旋運動と微細な姿勢制御に関与します。
- これらの筋は腰椎の回旋、側屈、および伸展運動の制御において重要な役割を果たし、特に動的安定性の維持に不可欠です(Kapandji, 2019)。
靱帯付着部としての機能:
- 乳頭突起-副突起間靱帯(Ligamentum mammillo-accessorium):乳頭突起から副突起(上関節突起の前面にある小突起)に向かって走行する短い靱帯で、局所的な安定性を提供します(Bogduk, 2021)。