横突肋骨窩 Fovea costalis processus transversi

J0126 (第6胸椎:頭側からの図)
J0127 (第6胸椎:右側からの図)

J0128 (第九胸椎から第二腰椎:右方から、そして少し背面からの図)

J0292 (胸椎と肋骨、椎間円板:前方からの図)

J0304 (右側の肋骨と関連する椎骨、靱帯)
解剖学的定義と構造
横突肋骨窩(Fovea costalis processus transversi)は、胸椎の横突起先端に位置する凹状の関節面であり、肋骨結節(tuberculum costae)と関節を形成する重要な解剖学的構造です(Gray and Lewis, 2016; Standring, 2020)。この構造は肋横突関節(costotransverse joint)を構成する一部であり、胸郭の運動性と安定性に不可欠な役割を果たしています。
存在部位と分布:
- 第1〜10胸椎の横突起にのみ存在する特徴的構造(Standring, 2020)
- 第11・12胸椎には横突肋骨窩が存在しない。これは対応する第11・12肋骨が浮遊肋骨(floating ribs)として肋骨頭のみで椎体と関節し、横突起との関節を形成しないためである(Drake et al., 2014)
微細解剖学的特徴:
- 関節面は硝子軟骨(hyaline cartilage)で覆われており、厚さは約0.5〜1.0mmである(Moore et al., 2018)
- 肋骨結節の関節面と対応し、滑膜関節(synovial joint)を形成する。この関節は関節包と滑液によって潤滑されている(Kapandji, 2019)
- 関節面の形状は楕円形から円形で、大きさは胸椎のレベルによって異なり、中位胸椎(第4〜7胸椎)で最も大きくなる傾向がある(Pal et al., 1988)
- 関節面は通常凹状であるが、胸椎下部では平坦または軽度凸状になることがある(Bogduk, 2012)
位置と方向性の変化:
横突起の長さ、方向、および横突肋骨窩の関節面の向きは、頭側から尾側に向かって系統的に変化します:
- 第1〜6胸椎:横突起は後外側方向に伸び、関節面は前外側を向く(White and Panjabi, 1990)
- 第7〜10胸椎:横突起は徐々に短くなり、関節面は上外側方向に向きを変える(Bogduk, 2012)
- この方向性の変化は、胸郭の形態と呼吸運動のメカニクスに対応している(Kapandji, 2019)
機能解剖学
肋椎関節複合体における役割:
横突肋骨窩は肋横突関節を構成し、肋骨頭関節(costovertebral joint)とともに肋椎関節複合体(costovertebral joint complex)を形成します。この複合体は呼吸運動における肋骨の動きを制御する重要な機能を持ちます(Kapandji, 2019)。