隆椎 Vertebra prominens [CVII]
隆椎は、解剖学的にも臨床的にも重要な意義を持つ特徴的な椎骨です。Gray and Williams (2015) によれば、この特徴的な椎骨は頚椎と胸椎の移行部における重要な解剖学的指標となっています:
解剖学的特徴
- 第7頚椎を指し、頚椎と胸椎の移行部に位置します (Standring, 2020)。
- 頚椎の最下位に位置し、形態学的には胸椎に類似した特性を持ちます (Moore et al., 2018)。
- 椎体の大きさは上位胸椎とほぼ同等で、頚椎から胸椎への移行を特徴づけます (Netter, 2019)。
- 棘突起が著しく長大で、尖端が二分せず、皮下で容易に触知できます (Standring, 2020)。
- 横突起は大きく、前結節と後結節を持ち、前結節には頚肋が癒合していることがあります (Drake et al., 2019)。
- 上下の関節突起の関節面が急な傾斜を示し、頚椎から胸椎への運動特性の変化に関与します (Bogduk, 2016)。
- 椎骨動脈孔は通常存在しますが、まれに欠如することがあります (Cramer and Darby, 2017)。
臨床的意義
- 体表指標として重要で、背部の解剖学的ランドマークとして用いられます (Magee, 2021)。
- 頭部を前屈させると、第7頚椎の棘突起が最も後方に突出して見えることから、「隆椎」(突き出た椎骨)と呼ばれます (Gray and Williams, 2015)。
- 頚椎症や神経根症の診断において重要な参照点となります (Jull et al., 2018)。
- 頚肋症候群の原因となることがあり、神経血管束の圧迫症状を引き起こす可能性があります (Tubbs et al., 2016)。
- 椎間板ヘルニアや頚椎不安定性の好発部位の一つです (Kendall et al., 2017)。
参考文献
- Bogduk, N. (2016) Clinical and Radiological Anatomy of the Lumbar Spine. 6th edn. London: Elsevier.
- Cramer, G. and Darby, S. (2017) Clinical Anatomy of the Spine, Spinal Cord, and ANS. 3rd edn. St. Louis: Elsevier.
- Drake, R., Vogl, A.W. and Mitchell, A. (2019) Gray's Anatomy for Students. 4th edn. Philadelphia: Elsevier.