環椎[C1];第1頚椎 Atlas [CI]
環椎(第1頚椎、C1)は、脊椎の最上位に位置する特殊な構造を持つ椎骨であり、頭蓋骨と脊柱を連結する重要な解剖学的要素です。ギリシャ神話で天空を支える巨人アトラスにちなんで名付けられました (Gray and Lewis, 2018)。

J0120 (環椎:頭蓋骨側からの図)

J0121 (環椎:尾側からの図)

J0125 (頚椎:前面からの図)

J0137 (各種の椎骨と椎骨の破格を集めて、個々のピースの形態学的価値を示します(Quainによる))

J0153 (新生児の環椎:上方からの図)
J0154 (新生児の軸椎:前方からの図)
J0155 (新生児の中部胸椎:上方からの図)
J0156 (新生児の第1仙椎:上方からの図)

J0296 (後頭骨と第1から第3の頚椎は、前方から見ると靱帯と結合する)

J0297 (後頭部、環椎、軸椎とその靱帯:後方からの図)

J0298 (環椎と軸椎の靱帯:上方からの図)

J0299 (後頭骨、第1および第2頚椎とその靭帯(第3層):後方からの図)

J0300 (後頭骨、最初と二番目の頚椎(第4層):後方からの図)

J0301 (後頭骨および第1から第3の頚椎、靱帯(第二層):後方からの図)

J0302 (後頭骨と最初から三番目までの頚椎を含む正中矢状断とそのリング状の組織:左方からの若干図式化された図)

J0425 (右側の斜角筋:右側からの図)

J0565 (右側の内頚動脈と鼓室)
解剖学的構造
基本構造
環椎は他の椎骨とは異なり、椎体を欠く唯一の椎骨です。その代わりに、前弓(anterior arch)、後弓(posterior arch)、および左右の外側塊(lateral masses)から構成される特殊な環状構造を形成しています (Standring, 2020)。この独特な形態は、頭蓋骨との関節および軸椎との関節において、広範囲の運動を可能にするために進化したものです。
前弓(Anterior Arch)
- 前結節(anterior tubercle):前弓の前面中央部に位置する突起で、頸長筋の付着部となります (Moore et al., 2022)。
- 歯突起窩(fovea dentis):前弓の後面に位置する関節面で、軸椎の歯突起(dens)と関節を形成します。この関節は環軸関節の前部を構成し、頭部の回旋運動において重要な役割を果たします (Drake et al., 2020)。
- 前弓は薄く扁平な構造で、発生学的には軸椎の椎体に相当する歯突起と癒合せずに独立した構造として残存したものです (Clemente, 2010)。
後弓(Posterior Arch)
- 後結節(posterior tubercle):後弓の後面中央部に位置する小さな突起で、項靭帯と小後頭直筋の付着部となります。他の椎骨の棘突起に相当しますが、環椎では非常に小さく発達しています (Netter, 2019)。
- 椎骨動脈溝(groove for vertebral artery):後弓の上面外側部に存在する溝で、椎骨動脈と第1頸神経後枝が通過します。この溝は臨床的に重要で、環椎の手術や手技の際に椎骨動脈損傷のリスクとなります (Debernardi et al., 2011)。
- 後弓は前弓よりも長く厚い構造を持ち、力学的な安定性に寄与しています (White and Panjabi, 1990)。
外側塊(Lateral Masses)
外側塊は環椎の最も頑丈な部分であり、前弓と後弓を連結する柱状の構造です。上関節面と下関節面を持ち、それぞれ後頭骨と軸椎との関節を形成します (Standring, 2020)。
- 上関節窩(superior articular facet):腎臓形または楕円形の凹面を呈し、後頭骨の後頭顆(occipital condyle)と環椎後頭関節(atlantooccipital joint)を形成します。この関節面は内側に傾斜しており、頭部の前後屈運動(屈曲と伸展)を可能にします。この運動は「うなずき運動」または「Yes運動」とも呼ばれます (Moore et al., 2022; Panjabi et al., 1991)。
- 下関節窩(inferior articular facet):ほぼ平面的または軽度の凹面を呈し、軸椎の上関節突起と外側環軸関節(lateral atlantoaxial joint)を形成します。この関節は頭部の回旋運動を可能にし、「首を振る運動」または「No運動」と呼ばれます (Netter, 2019; Panjabi et al., 1991)。
- 横突起(transverse process):外側塊の外側から突出する突起で、他の頸椎よりも長く頑丈です。頭最長筋、頭板状筋、肩甲挙筋などの筋肉が付着します (Drake et al., 2020)。
- 横突孔(transverse foramen):横突起の基部に存在する孔で、椎骨動脈、椎骨静脈、および交感神経叢が通過します。椎骨動脈は通常、第6頸椎の横突孔から上行し、環椎の横突孔を通過した後、後弓上面の溝を経て大後頭孔から頭蓋内に入ります (Debernardi et al., 2011)。