舌骨 Os hyoideum
舌骨は、解剖学的および臨床的に極めて重要な骨格要素であり、他の骨とは異なる独特な特徴を持っています (Gray and Lewis, 2024; Moore et al., 2023)。

内頚動脈、椎骨動脈の起始と走行

J0072 (舌骨:上方からの図)
J0073 (舌骨、右半分:左方からの図)

J0074 (舌骨、筋の起こる所と着く所:上方からの図)

J0075 (舌骨、右半分、筋の起こる所と着く所:左方からの図)

J0357 (頭蓋骨:右左方向からのX線像、軸線は右の外耳道の少し上から入ります)

J0422 (口腔底の筋:口腔側からの図)

J0558 (喉頭と舌の動脈:右側からの図)

J0572 (右の鎖骨下動脈:右側からの図)
解剖学的特徴
位置と形態
- 舌骨は下顎骨と喉頭の間の舌根部に位置するU字形の小骨で、第3-4頸椎の高さに相当します (Standring, 2023)。
- 骨格系の中で唯一、他の骨と関節を形成せず、筋肉と靭帯によってのみ支持されている骨です (Drake et al., 2023)。
- この独特な構造により、舌骨は三次元的に可動性が高く、嚥下や発声時に複雑な運動を行うことができます (Zhang et al., 2024)。
構造的構成要素
舌骨は以下の部分から構成されています:
- 体部(corpus ossis hyoidei):
- 前後に扁平な舟形を呈し、前面は凸面、後面は凹面となっています。
- 正中部では前面に隆起があり、上縁と下縁が識別できます。
- 体部の長さは約25-30mm、高さは約10-15mmです (Standring, 2023)。
- 大角(cornu majus):
- 体部の両端から後外側方に向かって伸びる長い突起です。
- 長さは約20-30mmで、後端は徐々に細くなり、茎突舌骨靭帯が付着します。
- 甲状舌骨靭帯の外側部が大角の下縁に付着します (Gray and Lewis, 2024)。
- 小角(cornu minus):
- 体部と大角の連結部の上縁から上外側方に突出する小さな円錐状の突起です。
- 長さは約5-10mmで、茎突舌骨靭帯が付着します。
- 小角と体部の連結は軟骨性または線維性で、加齢とともに骨化することがあります (Urbanova et al., 2023)。
筋付着部
舌骨は舌骨上筋群と舌骨下筋群の重要な付着部となっており、これらの筋群の協調運動により舌骨の複雑な三次元運動が実現されます。
舌骨上筋群(上面への付着):
- オトガイ舌骨筋(musculus geniohyoideus):下顎のオトガイ棘から起始し、舌骨体部の前面上部に停止します。舌骨を前上方に牽引し、下顎を固定した状態では舌骨を挙上します。
- 舌骨舌筋(musculus hyoglossus):舌骨体部の上縁と大角の全長から起始し、舌の側縁に停止します。舌を下制し、舌骨を固定した状態では舌の側縁を下方に引きます。
- 顎舌骨筋(musculus mylohyoideus):下顎の顎舌骨線から起始し、正中で反対側の筋と交わり、後部線維は舌骨体部の前面に停止します。口腔底を形成し、舌骨を前上方に挙上します。
- 茎突舌骨筋(musculus stylohyoideus):側頭骨の茎突起から起始し、舌骨体部と大角の連結部に停止します。舌骨を後上方に牽引します。