下顎骨 Mandibula
下顎骨は、顔面頭蓋を構成する唯一の可動性の骨であり、咀嚼、発声、嚥下などの生命活動に不可欠な役割を果たします。その複雑な解剖学的構造と臨床的重要性について、以下に詳述します(Gray et al., 2024)。

J0061 (下顎骨:下方からの図)

J0062 (下顎骨、右半分:外側からの図)

J0063 (下顎骨、右半分:内側からの図)

J0064 (下顎の右半分、筋の起こる所と着く所:外側からの図)

J0065 (下顎の右半分、筋の起こる所と着く所:内側からの図)

J0066 (新生児の下顎骨)
J0067 (3歳児の下顎骨)
J0068 (6歳児の下顎骨)
J0069 (8歳児の下顎骨)
J0070 (青年期の下顎骨)
J0071 (老年期の下顎骨)

J0086 (左側からの頭蓋骨の正中切断図)

J0112 (6.3cm長(12週)胎児、右下顎の半分)
J0113 (5ヶ月末胎児の右下顎半分)

J0355 (頭蓋骨:後頭前頭方向からのX線像)

J0421 (舌骨筋(深層):前面図)

J0558 (喉頭と舌の動脈:右側からの図)

J0639 (頭頚部の正中矢状断:左側からの右半分の図)

J0646 (3〜4歳の子供の乳歯が付いた下顎骨)

J0660 (舌筋:右側からの図)

J0661 (舌の深層筋:右側からの図)

J0669 (唾液腺:右側の下顎の右半分を除去した図)

J0670 (下顎腺とその周囲:右下方からの図)

J0684 (咽頭の筋、右側からの図)

J0912 (右の下顎神経の分岐、浅層)
解剖学的特徴
1. 形態と構造
下顎骨は、U字型の下顎体(corpus mandibulae)と、その後方に垂直に立ち上がる左右一対の下顎枝(ramus mandibulae)から構成されます(Standring, 2023)。
- 下顎体の構造
- 下顎体は水平部を形成し、その上縁には歯槽突起(processus alveolaris)があり、各側8本、計16本の歯を支持します。
- 下顎体の前面中央部には、オトガイ隆起(protuberantia mentalis)とオトガイ結節(tuberculum mentale)が存在し、顔貌の輪郭を形成します。
- オトガイ孔(foramen mentale)は、通常、第2小臼歯の下方に位置し、オトガイ神経と血管が通過します(Moore et al., 2023)。
- 下顎体の内側面には、オトガイ棘(spina mentalis)があり、オトガイ舌筋と顎舌骨筋が起始します。
- 下顎枝の構造
- 下顎枝は下顎体の後端から上方に伸び、上端は関節突起(processus condylaris)と筋突起(processus coronoideus)の2つの突起に分かれます。
- 関節突起の上端には下顎頭(caput mandibulae)があり、側頭骨の下顎窩と関節を形成し、顎関節(articulatio temporomandibularis)を構成します。
- 筋突起には側頭筋腱が付着します。
- 下顎枝の内側面には下顎孔(foramen mandibulae)があり、下歯槽神経と血管が進入し、下顎管(canalis mandibulae)を通って下顎体内を走行します(Netter, 2023)。
- 下顎孔の前縁には舌小舌(lingula mandibulae)という小突起があり、蝶下顎靭帯が付着します。
- 下顎角(angulus mandibulae)
- 下顎体と下顎枝が交わる部分で、咬筋と内側翼突筋の付着により粗面を形成します。
- 下顎角の角度は年齢により変化し、新生児では約140度、成人では約120度、老年期には再び開大します。
2. 神経血管系
下顎骨には豊富な神経血管が分布し、歯や周囲組織への血液供給と感覚伝達を担います。
3. 筋付着部
下顎骨には多数の筋が付着し、咀嚼運動、開口・閉口運動、および舌骨の運動を制御します。
4. 発生と成長
- 下顎骨は第一鰓弓のメッケル軟骨周囲の間葉組織から膜性骨化により形成されます。
- 出生時には左右2つの骨片からなり、生後1年で正中で癒合します。