涙嚢溝 Sulcus lacrimalis ossis lacrimalis

J0047 (右の涙骨:外側からの図)
J0048 (右の涙骨:内側からの図)
解剖学的特徴
涙嚢溝は、涙骨の外側面前半部に位置する縦方向の溝状構造です(Standring, 2020)。この溝は涙骨の重要な解剖学的特徴の一つであり、以下の詳細な構造を持ちます:
- **位置と走行:**涙骨外側面の前半部を縦方向に走行し、上方は眼窩縁付近から、下方は鼻腔へ向かって伸びています(Moore et al., 2017)
- **隣接構造との関係:**上顎骨前頭突起の涙嚢溝と合わさることで、涙嚢窩(fossa sacci lacrimalis)を形成します。この涙嚢窩は涙嚢を収容する骨性の窪みとなります(Netter, 2018)
- **骨縁:**溝の前縁は涙嚢稜(crista lacrimalis anterior)により、後縁は涙嚢後稜(crista lacrimalis posterior)により境界されています(Standring, 2020)
- **深さと形態:**溝の深さは個人差がありますが、通常数ミリメートル程度で、滑らかな骨面を持ちます(Drake et al., 2019)
機能と臨床的意義
涙嚢溝は涙道系の解剖学的基盤として重要な役割を果たします(Ali & Psaltis, 2015):
- **涙液排出機構:**涙腺から分泌された涙液は、涙小管、涙嚢を経て鼻涙管へと流れます。涙嚢溝はこの涙嚢を保護・固定する骨性構造として機能します(Paulsen et al., 2018)
- **涙嚢の位置:**涙嚢は涙嚢窩内に位置し、涙嚢溝により形成された空間に収まっています。涙嚢は長さ約12-15mm、幅約4-8mmの膜性の袋状構造です(Standring, 2020)
- **鼻涙管への移行:**涙嚢の下端は鼻涙管に続き、最終的に下鼻道へ開口します。この一連の構造により、過剰な涙液が鼻腔へ排出されます(Moore et al., 2017)
臨床的関連性
- **涙嚢炎:**鼻涙管の閉塞により涙嚢に炎症が生じる疾患です。涙嚢溝部に腫脹、疼痛、発赤が認められることがあります(Ali & Psaltis, 2015)
- **涙道閉塞:**先天性または後天性の鼻涙管閉塞により、流涙症(epiphora)が生じます。涙嚢溝の解剖学的理解は、涙道内視鏡検査や涙嚢鼻腔吻合術などの治療において重要です(Wormald et al., 2003)
- **外傷:**顔面外傷、特に鼻骨や上顎骨を含む中顔面骨折では、涙骨や涙嚢溝の損傷により涙道系の障害が生じることがあります(Netter, 2018)
- **腫瘍:**涙嚢腫瘍や周囲組織からの浸潤により、涙嚢溝周囲に腫瘤が形成されることがあります(Paulsen et al., 2018)