関節結節(側頭骨の)Tuberculum articulare (Ossis temporale)
側頭骨の関節結節は、解剖学的および臨床的に重要な構造です。複数の研究によって、その形態学的特徴と機能的意義が明らかにされています(Katsavrias, 2002; Iwasaki et al., 2010)。以下にその詳細を示します:
解剖学的特徴
- 頬骨突起の下面に位置する隆起した骨性構造です(Okeson, 2019)。
- 矢状断面では凸状の形態を示し、平均的な高さは約7mmです(Sümnig et al., 2013)。
- 頬骨突起基部の下面から前方に突出しています。
- 下顎窩(下顎頭が安静位で位置する凹部)の前方境界を形成します(Norton, 2016)。
- 関節面は緻密な線維軟骨組織で被覆されており、荷重に耐えられる構造になっています(Tanaka and Koolstra, 2008)。
- 関節包内に位置し、顎関節の機能的な関節面を構成します。
機能的役割
- 開口時には、下顎頭が関節結節に沿って前方に滑走します(Nickel et al., 2018)。
- 下顎の前方・側方運動の誘導路として機能します(Standring, 2020)。
- 咀嚼時の荷重分散に寄与し、関節の安定性を維持します(Ingawalé and Goswami, 2009)。
- 関節結節の傾斜角度(平均30〜60度)は個人差があり、咀嚼パターンに影響します(Jasinevicius et al., 2006)。
臨床的意義
- 関節結節の形態異常は、顎関節症の一因となることがあります(Celic et al., 2004)。
- 傾斜が急な場合、顎関節脱臼のリスクが高まります(Nitzan, 2002)。
- 関節結節の骨棘形成は、関節円板の動きを阻害し、クリッキングや開口障害を引き起こすことがあります(Tanaka et al., 2004)。
- 顎関節症の画像診断において、重要な評価ポイントとなります(Ahmad et al., 2009)。
- 顎関節手術(関節形成術など)の際に、重要な解剖学的指標となります(Mercuri, 2012)。