外耳孔 Porus acusticus externus
外耳孔は、外耳道の入口部分を指し、側頭骨の鱗部と岩様部の境界に位置する解剖学的構造です。解剖学的特徴と臨床的意義は以下の通りです(Standring, 2020):
1. 解剖学的特徴
- 位置:側頭骨の外側面に位置し、耳介と外耳道の境界部を形成しています(Drake et al., 2019)。
- 構造:外耳孔の周囲は軟骨性外耳道と骨性外耳道に分けられ、前者は弾力性があり、後者は硬い骨組織で構成されています(Moore et al., 2018)。
- 寸法:成人では直径約8-10mm、深さ約2.5cmで、前下方に向かってやや湾曲しています(Netter, 2019)。
- 発生学:胎生期に第一鰓弓と第二鰓弓から発生し、外耳道の形成過程で前後の縁が中央部より速く成長して先端で癒合します(Schoenwolf et al., 2021)。
- この発育過程により、一時的に外耳道下壁の骨板に孔(フォラーメン・オブ・ヒューシュケ)が生じることがあり、これが永続することもあります(Sadler, 2018)。
2. 臨床的意義
- 聴覚機能:音波を集め、効率的に中耳へと導く音響学的導管として機能します(Gulya et al., 2020)。
- 外耳炎:細菌やカビによる感染で炎症を起こし、疼痛や腫脹を引き起こすことがあります(Roland and Marple, 2018)。
- 耳垢栓塞:耳垢(セルメン)が蓄積して外耳道を塞ぎ、伝音性難聴の原因となることがあります(Schwartz et al., 2017)。
- 外傷:頭部外傷により外耳孔周囲の骨折が生じると、出血や中耳・内耳の損傷につながる可能性があります(Lo et al., 2019)。
- 先天異常:外耳道閉鎖症や狭窄症など、発生学的異常により外耳孔の形成不全が起こることがあります(Weerda, 2021)。
外耳孔は耳鏡検査や耳内視鏡検査の重要なランドマークであり、耳鼻咽喉科的処置や聴力検査においても重要な解剖学的基準点となっています(Probst et al., 2018)。また、側頭骨のCTやMRI検査においても、外耳孔は放射線学的ランドマークとして用いられます(Juliano et al., 2016)。
3. 参考文献
書籍
- Drake, R.L., Vogl, A.W. and Mitchell, A.W.M. (2019) Gray's Anatomy for Students. 4th ed. Philadelphia: Elsevier. — 医学生向けの解剖学教科書で、外耳孔の基本的解剖と周囲構造との関係について詳細に解説している。
- Gulya, A.J., Minor, L.B. and Poe, D. (2020) Glasscock-Shambaugh Surgery of the Ear. 7th ed. New York: Thieme. — 耳科手術の標準的教科書で、外耳孔へのアプローチや手術時の解剖学的考慮点について詳述している。
- Moore, K.L., Dalley, A.F. and Agur, A.M.R. (2018) Clinically Oriented Anatomy. 8th ed. Philadelphia: Wolters Kluwer. — 臨床解剖学の教科書で、外耳の実用的解剖学と臨床応用について解説している。