頚静脈窩 Fossa jugularis
頚静脈窩は、側頭骨錐体部の下面に位置する重要な解剖学的構造であり、頭蓋底の静脈系と神経系の理解において中心的な役割を果たします(Gray and Williams, 2024; Standring, 2023)。

J0028 (右の側頭骨:下方からの図)

J0030 (右の側頭骨:切断、外側部を削り取って鼓室とその周囲を示す図)

J0081 (外頭蓋底:筋の起こる所と着く所を示す図)

J0390 (人体の部位:頭部と頚部)

J0565 (右側の内頚動脈と鼓室)
解剖学的特徴
位置と形態
- 頚静脈窩は側頭骨錐体部の下面、後縁に近い中央部に位置し、頚静脈孔の直下に形成される深い凹みです(Moore et al., 2023)。
- その形状は弓状を呈し、深さと広がりには顕著な個体差が認められます。一部の個体では非常に深く拡張し、周囲の骨構造を圧迫することもあります(Netter, 2023; Drake et al., 2024)。
- 前方は頚動脈管の外口、内側は後頭骨の外側部、後外側は乳様突起の基部に隣接します(Standring, 2023)。
- 窩の底部は薄い骨質で構成され、時に骨欠損を伴うことがあり、これが臨床的に重要な意味を持ちます(Jackler and Brackmann, 2024)。
収容構造
- 頚静脈窩の主要な内容物は頚静脈上球(superior jugular bulb)であり、これは内頚静脈の最上部の拡張部です(Drake et al., 2024)。
- 頚静脈上球は横静脈洞と下錐体静脈洞からの静脈血を集め、内頚静脈へと移行します(Sinnatamby, 2023)。
- 窩の周囲には舌咽神経(第IX脳神経)、迷走神経(第X脳神経)、副神経(第XI脳神経)が頚静脈孔を通過します(Moore et al., 2023)。
- 内頚動脈は頚静脈窩の前内側を上行し、錐体尖に向かいます(Netter, 2023)。
周囲の解剖学的関係
- 上方では横静脈洞溝と後頭蓋窩に隣接し、頭蓋内構造との重要な連絡を持ちます(Gray and Williams, 2024)。
- 内側には後頭骨の頚静脈結節があり、舌下神経管の外口がこの近傍に開口します(Standring, 2023)。
- 外側には茎状突起と茎乳突孔があり、顔面神経が出現します(Drake et al., 2024)。
- 前方の頚動脈管との距離が近いため、外科的アプローチの際には注意が必要です(Jackler and Brackmann, 2024)。
臨床的意義