
J0024 (蝶形骨:前方からの図)

J0025 (蝶形骨:後方からの図)

J0679 (咽頭の上端:下方からの図)

J0682 (右側の耳管軟骨部:側面、わずかに下後方からの図)

J1043 (右の耳管軟骨、下方からの図)
蝶形骨棘 Spina ossis sphenoidalis
蝶形骨棘は、頭蓋底の重要な解剖学的指標となる骨性突起です。この構造は、蝶形骨の大翼の外側縁と後縁が交差する部分の下面から、鋭く下方に突出しており、頭蓋底の外科的アプローチにおいて重要な指標となります(Standring et al., 2021)。蝶形骨棘の形態学的特徴は個体差があるものの、その解剖学的位置の一貫性から神経血管構造への到達における信頼性の高いランドマークとして機能します(Rhoton, 2020)。
解剖学的特徴
位置と形態
- 蝶形骨大翼の外側縁と後縁の交点の下面に位置します(Moore et al., 2019)。
- 長さは通常3-5mm程度で、先端は尖鋭です(Lang, 2001)。形態学的研究では、長さの範囲は2.0-7.5mmと報告されており、性差や人種差も認められています(Tubbs et al., 2016)。
- 外側翼突筋の後方、中硬膜動脈の前方に位置します(Drake et al., 2020)。この位置関係は、側頭下窩へのアプローチにおいて重要な解剖学的指標となります(Iwanaga et al., 2020)。
- 蝶形骨棘の基部の幅は平均4-6mmで、棘の角度は個体により変動しますが、通常は下内側方向に突出します(Lang, 2001)。
周囲の重要構造物
- 下顎神経(V3)が蝶形骨棘の内側を通過し、卵円孔を出た直後に位置します(Drake et al., 2020; Tubbs et al., 2016)。蝶形骨棘からの距離は平均3-5mmで、神経ブロックや手術の際に損傷のリスクがあります(Iwanaga et al., 2020)。
- 中硬膜動脈が棘孔を通過して頭蓋内に入り、硬膜の栄養血管として機能します(Netter, 2019)。棘孔は蝶形骨棘の内側基部に位置し、平均直径1-2mmです(Standring et al., 2021)。
- 咬筋神経が蝶形骨棘の外側近傍を走行し、咬筋への運動神経支配を行います(Rhoton, 2020)。
- 耳管咽頭口が蝶形骨棘の内側前方約10-15mmに位置し、中耳の換気機能に関与します(Moore et al., 2019)。
靭帯付着部
- 蝶下顎靭帯が蝶形骨棘から下顎骨の舌小骨に伸び、顎関節の安定性に寄与します(Netter, 2019)。この靭帯は下顎の過度な前方移動を制限する役割を果たします(Standring et al., 2021)。
- 翼棘靱帯が蝶形骨翼突起の外側板後縁から蝶形骨棘に付着し、時に骨化して翼棘孔を形成します(Lang, 2001; Standring et al., 2021)。翼棘孔の出現頻度は人口の約10-20%と報告されており、この変異が存在する場合、下顎神経が骨性の孔を通過するため神経障害のリスクが高まります(Kim et al., 2018)。
- 翼蝶靱帯が蝶形骨棘と翼突鈎の間に張り、側頭下窩の境界形成に関与します(Tubbs et al., 2016)。
筋肉関係
- 口蓋帆張筋が蝶形骨棘の外側面から起始し、軟口蓋の緊張と耳管の開放機能を担います(Moore et al., 2019)。口蓋帆張筋の機能不全は中耳炎のリスク因子となります(Drake et al., 2020)。