蝶形骨棘 Spina ossis sphenoidalis
蝶形骨棘は、頭蓋底の重要な解剖学的指標となる骨性突起です。この構造は、蝶形骨の大翼の外側縁と後縁が交差する部分の下面から、鋭く下方に突出しており、頭蓋底の外科的アプローチにおいて重要な指標となります (Standring et al., 2021)。
解剖学的特徴
位置と形態
- 蝶形骨大翼の外側縁と後縁の交点の下面に位置します (Moore et al., 2019)。
- 長さは通常3-5mm程度で、先端は尖鋭です (Lang, 2001)。
- 外側翼突筋の後方、中硬膜動脈の前方に位置します (Drake et al., 2020)。
周囲の重要構造物
- 下顎神経(V3)が蝶形骨棘の内側を通過します (Drake et al., 2020; Tubbs et al., 2016)。
- 中硬膜動脈が棘孔を通過して頭蓋内に入ります (Netter, 2019)。
- 咬筋神経が近接して走行します (Rhoton, 2020)。
靭帯付着部
- 蝶下顎靭帯の起始部となり、顎関節の安定性に寄与します (Netter, 2019)。
- 翼棘靱帯が付着し、時に骨化して翼棘孔を形成します (Lang, 2001; Standring et al., 2021)。
筋肉関係
- 口蓋帆張筋の支持点となります (Moore et al., 2019)。
- 外側翼突筋の活動の支点としても機能します (Drake et al., 2020)。
臨床的意義
蝶形骨棘は、以下の臨床的場面で重要な意味を持ちます (Tubbs et al., 2016):
- 下顎神経ブロック時の重要な指標となります (Iwanaga et al., 2020)。