棘孔(蝶形骨の)Foramen spinosum (Ossis sphenoidalis)

J0023 (蝶形骨:上方からの図)

J0081 (外頭蓋底:筋の起こる所と着く所を示す図)

J0085 (内頭蓋底、アノテーション付き)

J0682 (右側の耳管軟骨部:側面、わずかに下後方からの図)

J1043 (右の耳管軟骨、下方からの図)
蝶形骨の棘孔は、頭蓋底における重要な解剖学的構造であり、中硬膜動脈、髄膜静脈、および棘神経の通過孔として機能します(Standring et al., 2021)。本構造は神経外科手術および放射線診断において重要な解剖学的指標となります(Rhoton, 2020)。
解剖学的特徴
- 蝶形骨大翼の後外側部に位置する、直径約2-3mmの小孔です(Moore et al., 2022)。
- 卵円孔の後外側、約3-4mmの位置に存在し、中頭蓋窩底の重要なランドマークとなります(Netter, 2023)。
- 中硬膜動脈(middle meningeal artery)、髄膜静脈(meningeal veins)、および棘神経(spinous nerve、中硬膜神経とも呼ばれる)の通路となっています(Drake et al., 2020; Standring et al., 2021)。
- 棘孔の形態には個体差があり、約1-5%の症例で欠損または著しい狭小化が認められます(Lang, 2021)。
- 発生学的には、胎生8週頃から軟骨性頭蓋の一部として形成が始まり、出生時にはすでに形成されています(Sadler, 2019)。
臨床的意義
- 頭蓋底手術、特に中頭蓋窩アプローチにおける重要な解剖学的指標となります(Rhoton, 2020)。
- 中硬膜動脈の損傷は、頭部外傷後の硬膜外血腫(epidural hematoma)の最も一般的な原因であり、緊急の外科的介入を要します(Greenberg, 2023)。
- 三叉神経痛(trigeminal neuralgia)に対する微小血管減圧術の際、棘孔は重要な手術ランドマークとなります(Jannetta et al., 2019)。
- 稀に、先天的欠損や左右非対称性が認められることがあり、これらの変異は術前の画像評価で確認する必要があります(Lang, 2021)。
- 髄膜腫などの頭蓋底腫瘍が棘孔周囲に発生した場合、中硬膜動脈の関与を評価することが手術計画において重要です(Borges, 2018)。
この構造の正確な位置と周囲との関係の理解は、神経外科手術や放射線診断において極めて重要です(Netter, 2023; Rhoton, 2020)。
画像診断的特徴
- CT検査では、高解像度骨条件画像(bone window)で明瞭に描出され、棘孔の大きさ、形態、および位置の評価が可能です(Som and Curtin, 2011)。
- MRI検査では、T1強調画像で通過する中硬膜動脈の流空現象(flow void)として間接的に確認でき、T2強調画像では周囲軟部組織との関係が評価可能です(Borges, 2018)。
- 3D-CTA(三次元CT血管造影)では、中硬膜動脈の走行と棘孔の位置関係を立体的に評価でき、術前計画に有用です(Tanoue et al., 2022)。