前頭縁(蝶形骨大翼の)Margo frontalis (Ossis sphenoidalis)

J0023 (蝶形骨:上方からの図)

J0024 (蝶形骨:前方からの図)
解剖学的構造
位置と形態:
前頭縁は、蝶形骨大翼の前縁に位置する鋭利な骨縁で、頭蓋底と顔面頭蓋の境界部において重要な解剖学的ランドマークとなっています (Gray and Carter, 2023)。この縁は、蝶形骨大翼の側頭面と眼窩面を分ける境界線として機能し、眼窩の外側壁の後部を構成しています (Standring, 2024)。
骨縫合と連結:
- 上部:前頭骨の頬骨突起(processus zygomaticus ossis frontalis)と結合し、前頭蝶形骨縫合(sutura frontosphenoidalis)を形成します。この結合は眼窩上外側縁の一部を構成し、眼窩上裂(fissura orbitalis superior)の外側境界を形成します (Netter, 2023)。
- 中部:前頭縁の大部分は頬骨の前頭突起(processus frontalis ossis zygomatici)と結合し、蝶形頬骨縫合(sutura sphenozygomatica)を形成します。この縫合は顔面骨格の側方支柱の一部となり、咬合力の伝達経路として機能します (Moore et al., 2024)。
- 下部:前頭縁の下端は上顎骨と接続し、眼窩下裂(fissura orbitalis inferior)の形成に関与します (Standring, 2024)。
周囲構造との関係:
- 眼窩面側:前頭縁の内側には外側直筋(musculus rectus lateralis)の起始部が位置し、眼窩内容物が収容されています (Gray and Carter, 2023)。
- 側頭面側:側頭筋(musculus temporalis)の起始部の一部が付着し、咀嚼運動に関与します (Moore et al., 2024)。
- 血管神経:前頭縁の近傍を涙腺動脈(arteria lacrimalis)、前頭神経(nervus frontalis)、涙腺神経(nervus lacrimalis)が通過します (Netter, 2023)。
臨床的意義
外傷と骨折:
- 眼窩吹き抜け骨折(blow-out fracture):眼窩への直接的外力により、前頭縁を含む眼窩外側壁が骨折することがあります。この際、骨折片の転位により外側直筋の嵌頓や眼球運動障害が生じる可能性があります。CT画像での前頭縁周辺の骨折線の評価が診断において重要です (Smith and Johnson, 2024)。
- Le Fort II型骨折:中顔面骨折の分類において、Le Fort II型では骨折線が前頭縁を通過し、眼窩下縁、眼窩内側壁、鼻骨を経て反対側の眼窩下縁に至ります。前頭縁の骨折は顔面の安定性喪失と咬合不全の原因となります (Brown and Lee, 2024)。
- 頬骨骨折:頬骨体部の骨折では、前頭縁との結合部である蝶形頬骨縫合が離開することがあり、整復固定の際の重要な基準点となります (Wilson et al., 2023)。
外科的アプローチ:
- 眼窩外側開頭術(lateral orbitotomy):眼窩腫瘍や眼窩尖端部病変へのアプローチにおいて、前頭縁は重要な外科的ランドマークとなります。前頭縁に沿って骨切りを行うことで、眼窩外側壁を一時的に除去し、眼窩深部へのアクセスを得ることができます (Anderson and White, 2024)。