大翼(蝶形骨の)Ala major
蝶形骨の大翼は、蝶形骨体の後部外側から前外側へと翼状に広がる、重要な骨構造です(Gray and Lewis, 2024)。発生学的には軟骨性に形成され、頭蓋底の重要な構成要素となります(Standring, 2023)。
解剖学的特徴
- 3つの面を持ちます(Moore et al., 2023):
- 頭蓋内面(上面):大脳面と呼ばれ、中頭蓋窩を形成し、側頭葉を支持します。
- 側頭面(外側面):側頭筋の付着部となり、上部の側頭面と下部の側頭下面に分かれます。
- 眼窩面(内側面):眼窩外側壁を形成し、眼球とその付属器を保護します。
- 3つの重要な神経血管孔があります(Netter, 2023):
- 正円孔:三叉神経第2枝(上顎神経)の通路となります。
- 卵円孔:三叉神経第3枝(下顎神理)と副髄膜動脈の通路となります。
- 棘孔:中硬膜動脈と髄膜枝(三叉神経)の通路となります。
- 周囲の骨との結合(Drake et al., 2024):
- 前頭骨:前頭縁で接合し、前頭頭頂縫合の一部を形成します。
- 頭頂骨:頭頂縁で接合し、蝶頭頂縫合を形成します。
- 側頭骨:側頭縁で接合し、蝶側頭縫合を形成します。
臨床的意義
大翼の損傷や骨折は、以下の重要な臨床症状を引き起こす可能性があります(Snell, 2023):
- 三叉神経障害による顔面の感覚異常。
- 中硬膜動脈損傷による硬膜外血腫。
- 眼窩内容の損傷による視覚障害や眼球運動障害。
- 頭蓋内圧亢進による神経症状。
また、大翼は画像診断(CT、MRI)において重要なランドマークとなり、頭蓋底手術のアプローチにおいても重要な指標となります(Osborn, 2024)。
参考文献
- Drake, R.L., Vogl, W. and Mitchell, A.W.M. (2024) Gray's Anatomy for Students, 5th ed. Philadelphia: Elsevier.
- Gray, H. and Lewis, W.H. (2024) Gray's Anatomy, 42nd ed. Edinburgh: Elsevier.
- Moore, K.L., Dalley, A.F. and Agur, A.M.R. (2023) Clinically Oriented Anatomy, 9th ed. Philadelphia: Wolters Kluwer.
- Netter, F.H. (2023) Atlas of Human Anatomy, 8th ed. Philadelphia: Elsevier.
- Osborn, A.G. (2024) Osborn's Brain, 3rd ed. Philadelphia: Elsevier.
- Snell, R.S. (2023) Clinical Anatomy by Systems, 10th ed. Philadelphia: Wolters Kluwer.