大翼(蝶形骨の)Ala major
蝶形骨の大翼は、蝶形骨体の後部外側から前外側へと翼状に広がる、重要な骨構造です(Gray and Lewis, 2018)。発生学的には軟骨性に形成され、頭蓋底の重要な構成要素となります(Standring, 2020)。

J0023 (蝶形骨:上方からの図)

J0024 (蝶形骨:前方からの図)

J0025 (蝶形骨:後方からの図)

J0085 (内頭蓋底、アノテーション付き)

J0086 (左側からの頭蓋骨の正中切断図)
J0087 (左側からの頭蓋骨の正中断図)

J0092 (右眼窩の側壁:左側からの図)

J0094 (頭蓋骨の前頭断、後方からの図)

J0098 (14cm長(4ヶ月)胎児の内頭蓋底)
J0099 (18cm長(4ヶ月)胎児の内頭蓋底)
J0100 (12cm長(4ヶ月)胎児の内頭蓋底)
J0101 (14 cm長(4ヶ月)胎児の内頭蓋底)

J0102 (19cm長(5ヶ月の初め)胎児の内頭蓋底)

J0103 (28cm長(6ヶ月)胎児の内頭蓋底)
解剖学的特徴
形態と位置
蝶形骨大翼は蝶形骨体部から側方に伸びる広い翼状構造で、頭蓋底の形成に重要な役割を果たします(Moore et al., 2018)。成人の蝶形骨大翼は、平均して前後径約4.5cm、内外径約3.5cmの大きさを持ちます(Singh, 2019)。
主要な面
- 3つの面を持ちます(Moore et al., 2018):
- 頭蓋内面(上面):大脳面と呼ばれ、中頭蓋窩を形成し、側頭葉を支持します。
- 側頭面(外側面):側頭筋の付着部となり、上部の側頭面と下部の側頭下面に分かれます。
- 眼窩面(内側面):眼窩外側壁を形成し、眼球とその付属器を保護します。
神経血管孔
- 3つの重要な神経血管孔があります(Netter, 2018):
- 正円孔:三叉神経第2枝(上顎神経)の通路となります。
- 卵円孔:三叉神経第3枝(下顎神経)と副髄膜動脈の通路となります。
- 棘孔:中硬膜動脈と髄膜枝(三叉神経)の通路となります。
周囲骨との結合
- 周囲の骨との結合(Drake et al., 2019):
- 前頭骨:前頭縁で接合し、前頭頭頂縫合の一部を形成します。
- 頭頂骨:頭頂縁で接合し、蝶頭頂縫合を形成します。
- 側頭骨:側頭縁で接合し、蝶側頭縫合を形成します。
発生学
蝶形骨大翼は胎生期の軟骨性頭蓋から発生し、胎生8週頃から軟骨内骨化が始まります(Gasser, 2021)。完全な骨化は出生後も継続し、思春期頃までに完了します(Sperber and Sperber, 2020)。
臨床的意義
大翼の損傷や骨折は、以下の重要な臨床症状を引き起こす可能性があります(Snell, 2021):
- 三叉神経障害による顔面の感覚異常。
- 中硬膜動脈損傷による硬膜外血腫。
- 眼窩内容の損傷による視覚障害や眼球運動障害。
- 頭蓋内圧亢進による神経症状。