小翼(蝶形骨の)Ala minor
蝶形骨の小翼は、蝶形骨体の前端から左右に翼状に延びる三角形の骨構造です(Gray et al., 2020)。この部位は、頭蓋底の形成に重要な役割を果たし、視神経や眼球運動に関わる重要な解剖学的構造物と密接な関係があります(Standring, 2021)。主な特徴と臨床的意義について、以下に詳しく説明します:

J0023 (蝶形骨:上方からの図)

J0024 (蝶形骨:前方からの図)

J0025 (蝶形骨:後方からの図)

J0085 (内頭蓋底、アノテーション付き)

J0086 (左側からの頭蓋骨の正中切断図)
J0087 (左側からの頭蓋骨の正中断図)

J0090 (右の眼窩:前方からの図)

J0091 (右の眼窩、アノテーション付き:前方からの図)

J0098 (14cm長(4ヶ月)胎児の内頭蓋底)
J0099 (18cm長(4ヶ月)胎児の内頭蓋底)
J0100 (12cm長(4ヶ月)胎児の内頭蓋底)
J0101 (14 cm長(4ヶ月)胎児の内頭蓋底)

J0102 (19cm長(5ヶ月の初め)胎児の内頭蓋底)

J0103 (28cm長(6ヶ月)胎児の内頭蓋底)
1. 解剖学的特徴
- 先端は細く鋭く、髄膜動脈溝を形成し、中硬膜動脈の経路となります(Moore et al., 2022)。
- 前縁は、前頭骨の眼窩部と鋸歯状縫合を形成し、頭蓋の安定性に寄与します(Netter, 2019)。
- 中央部分は、篩骨の篩板に接し、前頭蓋窩の境界を形成します(Standring, 2021)。
- 前根と後根の間にある視神経管は、視神経(CN II)と眼動脈の重要な通路となっています(Netter, 2019)。
- 後縁の内側端にある前床突起は、硬膜の付着部位となります(Gray et al., 2020)。
2. 臨床的意義
- 頭部外傷時、特に前頭蓋底骨折では、小翼の損傷により視神経障害を引き起こす可能性があります(Rhoton, 2020)。
- 上眼窩裂症候群では、この領域を通過する動眼神経(CN III)、滑車神経(CN IV)、外転神経(CN VI)が障害される可能性があります(Moore et al., 2022)。
- 髄膜腫などの頭蓋内腫瘍が小翼付近に発生することがあり、視覚障害や眼球運動障害の原因となることがあります(Yasargil, 2018)。
- 蝶形骨縁髄膜腫の手術アプローチでは、小翼の解剖学的位置関係が重要な指標となります(Rhoton, 2020)。
3. 発生学的観点
- 軟骨性頭蓋の一部として発生し、胎生期の頭蓋形成において重要な役割を果たします(Sadler, 2019)。
- 視神経管の形成不全は、先天的な視覚障害の原因となることがあります(Sadler, 2019)。
- 発生過程での骨化は、胎生6週頃から始まり、出生後も継続します(Sinnatamby, 2011)。
4. 血管・神経との関係
- 視神経(CN II)は視神経管を通過し、網膜からの視覚情報を脳に伝達します(Netter, 2019)。