





J0296 (後頭骨と第1から第3の頚椎は、前方から見ると靱帯と結合する)


J0299 (後頭骨、第1および第2頚椎とその靭帯(第3層):後方からの図)

J0300 (後頭骨、最初と二番目の頚椎(第4層):後方からの図)

J0301 (後頭骨および第1から第3の頚椎、靱帯(第二層):後方からの図)

J0302 (後頭骨と最初から三番目までの頚椎を含む正中矢状断とそのリング状の組織:左方からの若干図式化された図)
後頭骨(os occipitale)は脳頭蓋の後下部を構成する不対の骨であり、大後頭孔を中心として底部(pars basilaris)、外側部(partes laterales)、鱗部(squama occipitalis)の4つの主要部分から構成される(Standring, 2020)。発生学的には、これらの部分は軟骨性骨化により形成され、出生時には複数の骨化中心が存在し、生後数年をかけて癒合する(Moore et al., 2019)。底部は蝶形骨体と蝶形後頭軟骨結合(synchondrosis sphenooccipitalis)を形成し、通常15〜25歳で完全に骨性癒合する(Gray et al., 2021)。
大後頭孔(foramen magnum)は後頭骨の中央に位置する最大の孔であり、前後径約35mm、横径約30mmの楕円形を呈する(Standring, 2020)。この孔を通過する重要な構造には、延髄と脊髄の移行部、椎骨動脈、脊髄副神経(副神経の脊髄根)、脊髄髄膜が含まれる(Netter, 2018)。大後頭孔の形態異常や狭窄は、Arnold-Chiari奇形などの先天性疾患において重要な病態生理学的意義を持つ(Tubbs et al., 2010)。また、環椎後頭関節(atlantooccipital joint)を構成する後頭顆(condylus occipitalis)は大後頭孔の外側に位置し、頭部の屈曲・伸展運動の主要な軸を形成する(Bogduk and Mercer, 2000)。
後頭骨の内面は脳頭蓋の後頭蓋窩(fossa cranii posterior)を形成し、小脳、延髄、橋を収容する(Standring, 2020)。内面の正中部には内後頭隆起(protuberantia occipitalis interna)があり、ここから上下左右に内後頭稜と横溝(sulcus sinus transversi)が放散する(Gray et al., 2021)。横溝は横静脈洞(sinus transversus)を収容し、さらにS状静脈洞(sinus sigmoideus)へと続く(Netter, 2018)。後頭骨の外側部には舌下神経管(canalis nervi hypoglossi)が存在し、舌下神経(第XII脳神経)が頭蓋腔から出る通路となる(Moore et al., 2019)。
後頭骨の外面には外後頭隆起(protuberantia occipitalis externa)が顕著に存在し、ここから下方に外後頭稜(crista occipitalis externa)が伸びる(Standring, 2020)。外後頭隆起の上下には上項線(linea nuchalis superior)と下項線(linea nuchalis inferior)が走行し、多数の頚部筋群の付着部となる(Gray et al., 2021)。上項線には僧帽筋、胸鎖乳突筋、後頭筋が付着し、下項線には後頭下筋群(大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋)が付着する(Netter, 2018)。これらの筋群は頭部の運動制御と姿勢維持に重要な役割を果たす(Bogduk and Mercer, 2000)。
後頭骨周辺には重要な血管系が分布する。椎骨動脈(arteria vertebralis)は環椎の外側塊の上方で後方へ屈曲し、環椎後頭膜(membrana atlantooccipitalis posterior)を貫通して頭蓋腔へ入る(Standring, 2020)。この部位での椎骨動脈の走行は、環椎回旋位固定や頚部外傷において血管損傷のリスクとなる(Cothren et al., 2003)。後頭動脈(arteria occipitalis)は外頸動脈の枝であり、後頭骨の下項線に沿って走行し、後頭部の皮膚と筋群に栄養を供給する(Moore et al., 2019)。静脈系では、横静脈洞とS状静脈洞が後頭骨内面を走行し、内頸静脈へ注ぐ(Netter, 2018)。
後頭骨骨折は高エネルギー外傷、特に交通事故や転落事故において発生し、全頭蓋骨骨折の約5〜10%を占める(Alker et al., 1978)。大後頭孔を含む骨折は神経学的予後が不良であり、延髄損傷や椎骨動脈損傷を伴う可能性がある(Tuli et al., 2003)。CT検査は診断の標準であり、3D再構成画像により骨折の形態と転位を詳細に評価できる(Standring, 2020)。舌下神経管骨折は舌下神経麻痺を引き起こし、舌運動障害をもたらす(Keane, 1996)。治療は保存的管理が基本であるが、転位の大きい骨折や神経血管損傷を伴う場合は外科的固定が考慮される(Tubbs et al., 2010)。
環椎後頭関節は頭部運動の約50%を担う重要な関節であり、変性疾患、外傷、炎症性疾患の標的となる(Bogduk and Mercer, 2000)。環軸椎回旋位固定(atlantoaxial rotatory fixation)は、環椎と軸椎の回旋位での病的固定であり、頭部の斜頸姿勢を呈する(Fielding and Hawkins, 1977)。関節リウマチでは環椎歯突起間距離の拡大と環軸椎亜脱臼が生じ、脊髄圧迫のリスクとなる(Boden et al., 1993)。後頭頚椎移行部不安定性の治療には、後頭頚椎固定術(occipitocervical fusion)が施行される(Goel and Laheri, 1994)。
後頭骨の先天性奇形には、Arnold-Chiari奇形、頭蓋底陥入症(basilar invagination)、後頭骨裂(occipital cleft)などがある(Moore et al., 2019)。Arnold-Chiari I型奇形は小脳扁桃の大後頭孔下方への脱出であり、頭痛、めまい、嚥下障害を引き起こす(Tubbs et al., 2010)。頭蓋底陥入症は歯突起が大後頭孔へ侵入する病態であり、延髄圧迫や椎骨動脈圧迫をもたらす(Goel and Bhatjiwale, 1998)。これらの疾患はMRIによる詳細な評価が必要であり、症状のある症例では後頭下減圧術や後頭頚椎固定術が適応となる(Netter, 2018)。