前頭稜 Crista frontalis

J0036 (前頭骨:後方からの図)

J0355 (頭蓋骨:後頭前頭方向からのX線像)
解剖学的定義
前頭稜(Crista frontalis)は、前頭骨の内面(頭蓋内面)において矢状面上に位置する鋭利な骨性隆起です(Standring, 2020)。この構造は以下の特徴を持ちます:
- 前頭骨の上矢状洞溝(Sulcus sinus sagittalis superioris)の前方延長部として形成される(Moore et al., 2017)
- 後上方から前下方に向かって走行し、頭頂骨の矢状縫合部へと連続する
- 正中線上に位置し、左右の大脳半球を分離する大脳鎌(Falx cerebri)の前方付着部となる(Netter, 2018)
- 前頭骨の内板(lamina interna)から垂直に突出する薄く鋭利な隆起として観察される
解剖学的関係
前頭稜は以下の構造と密接な関係にあります:
- **硬膜構造:**大脳鎌の前縁が前頭稜に付着し、硬膜静脈洞系の一部である上矢状静脈洞の前方端部を支持する(Standring, 2020)
- **骨構造:**後方では頭頂骨の矢状溝へ移行し、前方では鶏冠(Crista galli)へと連続する(Moore et al., 2017)
- **脳構造:**前頭葉の内側面に近接し、左右の大脳半球の分離を維持する
臨床的意義
外傷と骨折
- 前頭部の直達外傷により前頭骨骨折が生じた場合、前頭稜の骨折を伴うことがある(Greenberg, 2019)
- 骨折片による硬膜損傷や大脳鎌の損傷は、硬膜外血腫や硬膜下血腫のリスクとなる
- 前頭洞を含む前頭骨骨折では、髄液漏出(CSF leak)や気脳症(pneumocephalus)の可能性がある(Greenberg, 2019)
画像診断
- 頭部CT検査の矢状断面や冠状断面で前頭稜は明瞭に観察される(Osborn, 2017)