頬骨突起(前頭骨の)Processus zygomaticus (Os frontale)

J0035 (前頭骨:前方からの図)

J0036 (前頭骨:後方からの図)

J0037 (前頭骨:下方からの図)

J0059 (右の頬骨:外側からの図)
1. 解剖学的定義と構造
前頭骨の頬骨突起は、前頭骨の眼窩部外側から外側下方へ突出する三角形状の骨性突起であり、眼窩の外側縁を形成する重要な構造である(Gray and Lewis, 2020)。この突起は以下の解剖学的特徴を有する:
- 位置と形態:前頭骨眼窩部の外側端から起始し、外側下方に向かって突出する板状の骨性突起。三角形ないし矩形の形状を呈し、その先端は鋭利である。
- 関節面:下端および外側面において頬骨の前頭突起(processus frontalis ossis zygomatici)と接合し、頬骨前頭縫合(sutura zygomaticofrontalis)を形成する(Standring, 2021)。この縫合は通常、鋸歯状の形態を示し、顔面骨格の強固な連結を提供する。
- 表面解剖:内側面(眼窩面)は平滑で眼窩外側壁の一部を構成し、眼窩脂肪組織および外眼筋(特に外直筋)に隣接する。外側面(側頭面)は側頭窩に面し、側頭筋膜の深層が付着する。
- 辺縁構造:上縁は前頭骨の前頭稜へ連続し、前縁は眼窩上縁の外側部を形成する。下縁は頬骨との縫合線となり、眼窩外側縁の中央から上部を構成する。
微細構造:頬骨突起は緻密骨と海綿骨の二層構造からなり、外側皮質骨は比較的厚く、内側は薄い皮質骨で覆われた海綿骨構造を示す。骨梁は力学的ストレスに対応した配向を示し、咀嚼力の伝達経路となる(Schuenke et al., 2020)。
2. 臨床的意義
前頭骨の頬骨突起は、顔面外科、眼科、形成外科領域において極めて重要な解剖学的構造である(Netter, 2019):
2.1 顔面外傷における重要性
- 眼窩骨折:顔面外傷において、頬骨突起は眼窩の主要な支持構造の一つであり、外傷により容易に骨折する。特に眼窩吹き抜け骨折(orbital blowout fracture)では、眼窩底骨折に伴って外側壁の骨折が生じることがある。眼窩外側縁の変形は眼球位置異常や複視の原因となる。
- 頬骨複合体骨折:頬骨骨折(zygomatic complex fracture)では、頬骨前頭縫合部での離開が特徴的所見の一つである。この骨折は典型的に四ヶ所の骨折線(頬骨前頭縫合、眼窩下縁、頬骨弓、眼窩外側壁)を伴う三脚骨折(tripod fracture)として知られる。
- Le Fort骨折:Le Fort III型骨折(頭蓋顔面離断)では、頬骨前頭縫合部での骨折が必発所見である(Manson et al., 2022)。この骨折パターンでは、顔面骨格全体が頭蓋底から分離し、重篤な機能障害と整容的問題を引き起こす。
2.2 外科的アプローチ
- 眼窩手術:眼窩外側壁へのアプローチにおいて、頬骨突起は重要な解剖学的ランドマークとなる。外側眼窩切開(lateral orbitotomy)では、この部位を露出し、必要に応じて一時的に骨切りを行うことで、眼窩深部へのアクセスが可能となる(Ellis and Zide, 2018)。
- 顔面骨再建:顔面形成外科手術において、頬骨突起の正確な位置関係の回復は、眼窩容積の維持、眼球位置の正常化、顔面の左右対称性の確保に不可欠である。プレート固定術では、頬骨前頭縫合部が主要な固定点の一つとなる。
- 側頭窩アプローチ:側頭窩や中頭蓋窩へのアプローチでは、頬骨突起の外側面が重要な解剖学的目印となり、側頭筋の剥離や骨削除の範囲決定に利用される。
2.3 画像診断