眼窩上切痕は、前頭骨の眼窩上縁に位置する重要な解剖学的構造であり、神経血管束が通過する部位として臨床的にも重要な意義を持ちます。




眼窩上切痕は、前頭骨の眼窩上縁の内側1/3と中央1/3の境界付近に位置します(Whitnall, 1921; Berry, 1962)。眼窩上縁の内側部には通常2つの切痕または孔が存在し、内側のものを前頭切痕(前頭孔、Incisura frontalis / Foramen frontale)、外側のものを眼窩上切痕(眼窩上孔、Incisura supraorbitalis / Foramen supraorbitale)と呼びます(Williams et al., 1995)。
眼窩上切痕は前頭骨の眼窩部に位置し、眼窩の上壁を構成する重要な解剖学的指標となります(Standring, 2020)。切痕の深さや幅には個体差が大きく、一部の個体では切痕が完全に閉鎖して眼窩上孔(Foramen supraorbitale)を形成します(Chmielewski et al., 2013)。
眼窩上切痕から孔への移行には様々な形態が存在します。完全な切痕から完全な孔まで、連続的な変異が観察されます。一部の症例では、線維性結合組織によって部分的に閉鎖された中間型も存在します(Tomaszewska et al., 2012)。
日本人の頭蓋骨における出現頻度に関する大規模研究(413頭蓋826側)では(山田・鈴木, 1995):
人種間での出現頻度にも差があることが知られており、ヨーロッパ系集団とアジア系集団では孔への閉鎖率が異なります(Webster et al., 1986; Cutright et al., 2003)。
眼窩上動脈(A. supraorbitalis)
眼動脈(A. ophthalmica)の分枝で、眼窩上切痕または孔を通過して前頭部に至ります。前頭部の皮膚、前頭筋、骨膜、および前頭洞の粘膜に分布します(Dutton, 2011)。動脈は通常、眼窩上神経に伴走して走行し、前頭部での豊富な血管網を形成します。
眼窩上静脈(V. supraorbitalis)
前頭部の静脈血を集めて眼窩上切痕を通過し、上眼静脈(V. ophthalmica superior)に還流します(Erdogmus and Govsa, 2008)。この静脈は顔面静脈との吻合も持ち、頭蓋外と頭蓋内の静脈系を結ぶ重要な経路の一つです。