蝶形骨角(頭頂骨の)Angulus sphenoidalis (Ossis parietalis)
解剖学的特徴
蝶形骨角は、頭頂骨の4つの角のうち前下方に位置する角で、以下の詳細な解剖学的特徴を持ちます(Gray, 2020; Standring, 2020):
- **位置関係:**頭頂骨の前下部において、前縁と下縁(鱗状縁)が交わる部位に形成される鋭角な突起(Moore et al., 2018)
- **関節接合:**前方では前頭骨の頭頂縁、下方では蝶形骨大翼の頭頂縁と接し、翼点(pterion)の形成に関与する(Snell, 2019)
- **形態:**通常は鋭角を呈するが、個体差があり、時に円形化している場合もある(Drake et al., 2020)
- **縫合:**蝶形頭頂縫合(sutura sphenoparietalis)の一部を構成し、頭蓋冠と頭蓋底の移行部に位置する(Netter, 2019)
- **内面構造:**内側面では中硬膜動脈の前枝の圧痕が認められることがある(Rhoton, 2000)
臨床的意義
蝶形骨角は臨床医学において以下の重要性を持ちます:
- **翼点(プテリオン)の構成:**頭蓋骨の最も薄弱な部位である翼点の形成に関与し、頭部外傷時の骨折好発部位として重要。この部位の骨折は中硬膜動脈損傷を伴うことが多く、急性硬膜外血腫の原因となる(Greenberg, 2016; Bullock et al., 2006)
- **神経外科手術の指標:**前側頭開頭術や翼点開頭術における重要な解剖学的ランドマークとして用いられる(Yasargil, 1984; Spetzler & Lee, 1989)
- **画像診断:**CTやMRIにおいて、中頭蓋窩の評価や脳腫瘍(特に蝶形骨縁髄膜腫)の位置関係を判断する際の基準点となる(Osborn, 2018)
- **頭蓋骨縫合早期癒合症:**蝶形頭頂縫合の早期癒合は頭蓋骨の成長異常を引き起こす可能性がある(Cohen & MacLean, 2000)
- **法医学的応用:**頭蓋骨の個人識別や年齢推定において、縫合の癒合度を評価する重要な部位の一つ(White et al., 2012)
発生学的背景
蝶形骨角は、胎生期における膜性骨化により形成される頭頂骨の一部として発生します(Sadler, 2019)。出生時には縫合は開存しており、成長とともに徐々に複雑化し、通常は成人期に完全に癒合します(Scheuer & Black, 2000)。
関連する血管・神経構造
蝶形骨角の内側面には以下の重要な構造が関連します(Rhoton, 2002):
- 中硬膜動脈(middle meningeal artery)の前枝が走行し、骨溝または骨管を形成する(Netter, 2019)