前頭角(頭頂骨の)Angulus frontalis (Ossis parietalis)
前頭角は、頭頂骨の四つの角のうち最も前方かつ上方に位置する鋭角部分であり、冠状縫合と矢状縫合が交わる前方部付近に形成されます(Gray, 1918; Standring, 2020)。この角は、頭頂骨の前上縁と上縁が会合する部位に位置し、前頭骨の頭頂角と接合して冠状縫合の一部を構成します。
解剖学的特徴
前頭角の主な解剖学的特徴は以下の通りです:
- 位置:頭頂骨の前上方端に位置し、前頭骨、対側の頭頂骨と接する
- 形状:ほぼ直角に近い鋭角を呈し、個体差により約90度前後の角度を示す
- 縫合構造:冠状縫合(sutura coronalis)と矢状縫合(sutura sagittalis)の交点であるブレグマ(bregma)に近接する
- 骨の厚さ:この部位は頭蓋骨の中でも比較的薄い領域であり、小児期には骨化が未完成な前頭泉門(大泉門)が存在する
- 内面構造:内板(lamina interna)には上矢状静脈洞溝(sulcus sinus sagittalis superioris)の前端部が認められる
前頭角の形成は、胎生期における膜性骨化過程において、頭頂骨の骨化中心から放射状に骨組織が成長することで形成されます(Williams et al., 1995)。出生時には前頭泉門として軟部組織で満たされており、生後18〜24ヶ月で完全に閉鎖します。
臨床的意義
前頭角は臨床医学において以下のような重要性を持ちます:
- 大泉門の診察:小児科では、前頭角周囲の大泉門の触診により、頭蓋内圧の状態、脱水、髄膜炎などの評価を行います。大泉門の膨隆は頭蓋内圧亢進を、陥凹は脱水を示唆します(Moore et al., 2018)
- 頭蓋縫合早期癒合症(craniosynostosis):冠状縫合や矢状縫合の早期閉鎖により、前頭角周囲の骨成長が制限され、頭蓋変形(前頭骨突出や短頭症など)を引き起こします。外科的介入が必要となる場合があります
- 外傷評価:前頭角領域は頭部外傷時に骨折が生じやすい部位であり、CTスキャンでの評価が重要です。この部位の骨折は上矢状静脈洞損傷のリスクを伴います
- 神経外科手術のランドマーク:前頭開頭術や脳腫瘍摘出術において、前頭角はブレグマと共に重要な外科的指標となります(Standring, 2020)
- 法医学的応用:頭蓋骨の形態から年齢推定を行う際、前頭角周囲の縫合閉鎖状態が参考にされます
また、前頭角周囲の頭皮は前頭筋と帽状腱膜が付着しており、頭皮裂傷時には特徴的な開大を示すため、形成外科的処置において注意が必要です(Moore et al., 2018)。
画像診断における評価
頭部CT・MRI検査において、前頭角は以下の評価に用いられます: