頭蓋骨 Ossa cranii

頭蓋骨は、頭蓋を構成する骨の総称であり、脳や特殊感覚器官を保護する重要な役割を担っています。解剖学的および臨床的観点から見ると、以下のような詳細な特徴があります(Gray and Carter, 2020; Standring, 2023):

J0076 (頭蓋骨：右方からの図)

J0077 (頭蓋骨、筋の起こる所と着く所：右方からの図)

J0078 (頭蓋骨：正面からの図)

J0079 (頭蓋骨、筋の起こる所と着く所を示す：前面からの図)

J0082 (頭蓋骨：上方からの図)

J0295 (頭蓋骨と頚椎の靭帯：右側からの図)

J0354 (頭蓋骨：後頭前頭方向からのX線像)

J0355 (頭蓋骨：後頭前頭方向からのX線像)

J0356 (頭蓋骨：右左方向からのX線像)

J0357 (頭蓋骨：右左方向からのX線像、軸線は右の外耳道の少し上から入ります)

J1050 (頭蓋骨中の右耳骨迷路の位置：上方からの図)

1. 構造と組成

頭蓋は成人では15種類23個の骨で構成されており、これらの大部分は縫合(suture)によって強固に結合しています。縫合は線維性結合組織からなる不動性の関節であり、頭蓋骨の構造的安定性を提供しています。主要な縫合には、冠状縫合(coronal suture)、矢状縫合(sagittal suture)、ラムダ縫合(lambdoid suture)があります(Moore et al., 2018)。

小児期には縫合部が未閉鎖であり、「泉門(fontanelle)」と呼ばれる膜性の隙間が存在します。主要な泉門には大泉門(anterior fontanelle)と小泉門(posterior fontanelle)があり、大泉門は生後18〜24ヶ月で、小泉門は生後2〜3ヶ月で閉鎖します。この構造は出産時の頭蓋の変形を可能にし、また脳の成長に対応します。臨床的には、泉門の膨隆は頭蓋内圧亢進の指標となり、陥凹は脱水症の徴候となります(Drake et al., 2020)。

頭蓋骨は複雑な三次元構造を持ち、各骨は外板(outer table)、板間層(diploe)、内板(inner table)の三層構造からなります。板間層は海綿骨質で構成され、導出静脈(emissary veins)が通過します。内板は外板よりも薄く脆弱であり、外傷時に骨折しやすい特徴があります(Netter, 2019)。

主な頭蓋骨には以下が含まれます:

• 後頭骨(occipital bone, 1個): 大後頭孔(foramen magnum)を有し、脊髄が通過します。また、環椎後頭関節を形成し、頭部の屈曲・伸展運動を可能にします。
• 蝶形骨(sphenoid bone, 1個): 頭蓋底の中央に位置し、トルコ鞍(sella turcica)に下垂体を収容します。視神経管、上眼窩裂、正円孔、卵円孔、棘孔などの重要な孔を有します。
• 側頭骨(temporal bone, 1対2個): 錐体部、鱗部、鼓室部、乳様部から構成され、聴覚器官と平衡器官を収容します。内頸動脈管、頸静脈孔、内耳道などの重要な構造があります。
• 頭頂骨(parietal bone, 1対2個): 頭蓋冠の大部分を形成し、脳の頭頂葉を保護します。
• 前頭骨(frontal bone, 1個): 前頭洞を含み、眼窩上縁と前頭蓋底の一部を形成します。
• 篩骨(ethmoid bone, 1個): 篩骨迷路と篩骨洞を含み、嗅神経が篩板を通過します。鼻腔の上部と眼窩の内側壁の一部を形成します。

これらの骨は精密に配置され、各々が特定の解剖学的および機能的役割を担っています(Drake et al., 2020)。

2. 分類

頭蓋骨は機能的および発生学的に脳頭蓋(neurocranium, 神経頭蓋)と顔面頭蓋(viscerocranium, 内臓頭蓋)に分類されます。

脳頭蓋は脳を保護し、8個の骨から構成されています:

• 前頭骨(1個)
• 頭頂骨(2個)