骨端線 Linea epiphysialis
定義と解剖学的特徴
骨端線(こったんせん、Linea epiphysialis)とは、骨端軟骨(成長軟骨板)が骨化して骨端接合部が閉鎖した後に、X線画像上で細い透過性の線として観察される構造です(Standring, 2020)。この線は骨端接合部瘢痕(Epiphysial scar)とも呼ばれ、かつて活発な軟骨内骨化が行われていた部位の痕跡を示しています。
骨端線は、骨端(epiphysis)と骨幹(diaphysis)が完全に癒合した後も、骨梁の配列パターンや骨密度の違いにより、成人になっても画像診断で識別可能な場合があります(Drake et al., 2019)。通常、思春期後期から成人初期(概ね15歳から25歳の間)にかけて、各骨の成長が完了すると骨端線として残ります。
解剖学的分布
骨端線は長管骨の両端部を中心に、以下のような主要部位で観察されます(Moore et al., 2017):
- 上肢の骨端線
- 上腕骨近位端:大結節、小結節、骨頭部
- 上腕骨遠位端:内側上顆、外側上顆、滑車、小頭
- 橈骨近位端および遠位端
- 尺骨近位端(肘頭)および遠位端
- 下肢の骨端線
- 大腿骨近位端:骨頭、大転子、小転子
- 大腿骨遠位端:内側顆、外側顆
- 脛骨近位端:内側顆、外側顆、脛骨粗面
- 脛骨遠位端および内果
- 腓骨近位端および外果
- その他の部位
- 腸骨稜(寛骨)
- 肩甲骨の肩峰、烏口突起
- 椎骨の上下端板
臨床的意義
骨端線の理解は、以下のような臨床場面で重要な意義を持ちます:
- 年齢推定:法医学や身元確認において、骨端線の閉鎖パターンは個体の年齢推定に利用されます(Schmeling et al., 2007)。各骨端の閉鎖時期には一定の順序と年齢範囲があるため、複数の骨端線を評価することで比較的正確な年齢推定が可能です。
- 成長障害の評価:小児期から思春期にかけて、骨端線(成長軟骨板)の早期閉鎖や遅延は、内分泌疾患(成長ホルモン分泌不全、甲状腺機能異常など)や栄養障害、代謝性骨疾患の診断に役立ちます(Patel & Hoyer, 2020)。
- 外傷診断:小児の骨折において、骨端線離開(Salter-Harris分類)は重要な病態です(Salter & Harris, 1963)。成長軟骨板を通る骨折は、適切に治療されないと成長障害や変形を引き起こす可能性があります。成人では、骨端線と骨折線を鑑別することが診断上重要です。
- スポーツ医学:若年アスリートにおける過度の運動負荷は、成長軟骨板の損傷や早期閉鎖を引き起こすリスクがあります(Caine et al., 2006)。骨端線の状態評価は、トレーニング強度の調整や競技復帰の判断に活用されます。
- 画像診断での注意点:X線画像上、骨端線は骨折線と誤認されることがあります。特に小児では、正常な骨端線の位置と形態を熟知することが、過剰診断や見落としを防ぐために不可欠です(Keats & Anderson, 2012)。
骨端線の閉鎖時期(参考)
骨端線の閉鎖時期は個人差がありますが、一般的な目安は以下の通りです(Schaefer et al., 2009):
- 膝関節周囲(大腿骨遠位端、脛骨近位端):14~18歳
- 股関節周囲(大腿骨近位端):16~19歳