骨の緻密質 Substantia compacta(皮質骨 Cortical bone)
緻密質(compact bone)は、骨の最も外側を覆う密で均質な層状構造を持つ骨組織です(Standring, 2020)。皮質骨(cortical bone)とも呼ばれ、骨全体の約80%を占めています(Clarke, 2008)。
解剖学的構造
マクロ構造
- 長骨の骨幹部(diaphysis)では最も厚く、骨端部(epiphysis)に向かうにつれて薄くなります(Standring, 2020)
- 骨幹部の緻密質の厚さは通常2〜6mm程度ですが、大腿骨では最大10mmに達することもあります(Wolff, 1892)
- 内側は海綿質(spongy bone)に接し、外側は骨膜(periosteum)で覆われています(Gray, 1918)
- 骨髄腔(medullary cavity)を取り囲み、骨の円筒状の構造を形成します(Standring, 2020)
ミクロ構造
- オステオン(ハバース系):緻密質の基本構造単位で、中心に血管を含むハバース管(Haversian canal)があり、その周囲に同心円状の骨層板(lamellae)が配置されています(Havers, 1691; Jee, 2001)
- フォルクマン管(Volkmann's canal):ハバース管を横断的に連結し、血管の通路となります(Volkmann, 1873)
- 骨細胞(osteocytes):骨層板の間に存在し、骨小腔(lacunae)に収まっています(Bonewald, 2011)
- 骨小管(canaliculi):骨細胞同士を連結する微細な管で、栄養供給と代謝産物の交換を行います(Bonewald, 2011)
組織学的特徴
緻密質は以下の3種類の骨層板から構成されます(Jee, 2001):
- ハバース層板(Haversian lamellae):オステオンを構成する同心円状の層板
- 介在層板(interstitial lamellae):古いオステオンの残存部分で、オステオン間を埋めています
- 外環状層板(outer circumferential lamellae)と内環状層板(inner circumferential lamellae):骨の外側と内側の表面を覆う層板
生理学的機能
- 機械的支持:体重を支え、筋肉の付着部として機能し、運動時の力学的負荷に耐えます(Wolff, 1892; Frost, 2003)