足底 Planta

足底は、足根部の関節より前方部の下面を指し、解剖学的には人体の最下部に位置する重要な構造です(Gray and Williams, 2000)。この領域は無毛で通常メラニン色素を持たず、分厚い角質層を持つ特殊な皮膚で覆われています。体重がかかる部分(踵部、中足骨頭部、母趾球部など)には、特徴的な皮膚隆線(皮溝と皮丘)が備わっており、これにより摩擦係数が高まり、直立歩行時の安定性を提供しています(Standring, 2015)。

解剖学的区分

解剖学的には、足底は3つの領域に区分されます:踵部(踵骨隆起部)、中足部(土踏まずを形成する部分)、前足部(中足骨頭と趾底部)(Moore et al., 2018)。皮膚の厚さは場所によって異なり、踵部では最も厚く(15-20mm程度)、前足部では5-7mm程度です。

組織学的特徴

組織学的には、足底の皮膚は表皮、真皮、皮下組織から構成されます。表皮は非常に厚い角質層を持ち、圧力に対するバリアを形成します。真皮には密集したコラーゲン線維と弾性線維があり、皮下組織には脂肪小葉が特殊な線維性中隔によって区画化され、クッションとして機能しています(Mescher, 2016)。

血管・神経分布

血管系では、足底動脈と足背動脈からの分枝が豊富な血管網を形成し、皮膚や筋肉に栄養を供給します(Feneis and Dauber, 2000)。特に、足底では階層状の血管配列が見られ、圧力がかかっても血流が維持される仕組みが備わっています。神経支配は主に脛骨神経の足底枝(内側・外側足底神経)によって行われ、触覚や圧覚に関する豊富な感覚受容器が存在します(Gilroy et al., 2016)。

臨床的意義

臨床的には、足底の異常は歩行障害や全身バランスの問題に直結します。足底筋膜炎、胼胝(タコ)、鶏眼(ウオノメ)、扁平足、糖尿病性足病変などの疾患が見られます(Kumar and Clark, 2017)。特に糖尿病患者では神経障害や血流障害により足底潰瘍が生じやすく、重症化すると切断に至ることもある重要な診療部位です。

参考文献