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(RK633(心臓の血管:胸肋面)、RK635(心臓の血管:横隔面) )
心臓のすべての静脈は直接心臓に開口している。左心室か右心室に開く少数の細小静脈を除き、ほとんどすべてが右心房に開口している。
冠状静脈洞Sinus coronarius:心臓の静脈は、前心静脈と細小心静脈を除き、1本の太い幹である大心静脈V. cordis magnaとその続きの冠状静脈洞Sinus coronariusに集まる。その血液は右心房の後部、下大静脈と右房室口の間の隅に注がれる。大心静脈の冠状静脈洞への移行部は左心房の幅のほぼ中央に位置し、ここに2枚の帆状弁からなる弁装置がある。
冠状静脈洞は大心静脈の終末部で、心房の筋肉内に包まれている。これは以前存在した左上大静脈V. cava cranialis sinistraの名残である。2つの静脈部が合流する境界には単一または重複した弁がある。縦の枝が開口する箇所にもしばしば単一の弁が見られる。
大心静脈V. cordis magna:大心静脈は心尖部で始まり、そこで心臓後面の静脈と吻合する。前室間溝を通り、次第に太くなりながら心室底に進む。その後、冠状溝を左後方に向かい、最終的に冠状静脈洞に移行する。
前室間溝では左右の心室および中隔からの枝を受け入れる。水平に走る部分では左心房と左心室からの枝が大心静脈に流入する。左心室の左縁では左心室からのかなり太い枝がこれに合流する。
左心室後静脈V. dorsalis ventriculi(cordis) sinistri:左心室の後面で後室間溝の左側を走り、冠状静脈洞の始部に開口する。
後心室間溝静脈V. interventricularis dorsalis cordis:心室の後室間溝を通って冠状静脈洞に向かうが、時には独立して冠状静脈洞の近くで右心房に開口する。
小心静脈V. cordis parva:右心房と右心室の後面にある複数の小静脈が集まってできる小幹で、後面の冠状溝の右部分を走り、冠状静脈洞か直接右心房に開口する。
心臓の静脈枝は一般に動脈の走行に沿っている。例外的に1本の動脈が2本の静脈を伴うこともあるが、通常は1本の静脈を伴う。
左心房斜静脈V. obliqua atrii sinistri:これも冠状静脈洞と同様、左上大静脈の名残である。左上大静脈が閉鎖してできた靱帯、すなわち左上大静脈靱帯Lig. venae cavae sinistraeを含む心膜嚢のしわから始まり、左心房の後面上を斜めに左から右へ走り、弁を伴わずに冠状静脈洞に合流する。通常は細い静脈である。
前心静脈Vv. cordis ventrales:1本または2本以上の細い静脈で、右心室の前壁にあり、右心房の前縁に開口する。
細小心静脈Vv. cordis minimae:非常に細い静脈で、左右の心房と心室に直接(細小心静脈孔Foramina venarum minimarumを通して)開口する。この静脈は左右の心房の壁と心房中隔の壁に最も多く存在する。
**変異:**L. von Davidaは心臓の2〜3本の静脈が上大静脈の終末部に開口している例を報告している。Z. Anat. u. Entw., 68. Bd., 1923.