この筋は2~3個の尖頭をもって第5または第6~第7頚椎の肋横突起の後結節から起こり、第2肋骨に付着する。
前斜角筋と中斜角筋の間に重要な間隙、すなわち斜角筋裂Scalenusspalteが存在する。これは鎖骨下動脈A. subclaviaと腕神経叢Plexus brachialisの通路であり、鎖骨下静脈はここを通らず前斜角筋の前方を通過する。横隔神経は前斜角筋の上を胸腔へと走行する。後斜角筋は中斜角筋と密接していることがある。
**神経支配:**頚神経叢の枝による。Rauberによれば腕神経叢の枝も寄与する。
**脊髄節との関係:**前斜角筋はC. V~VII、中斜角筋はC. (II)III~VIII、後斜角筋はC. (V)VI~VIII。Eislerによれば、後斜角筋はC. VIIあるいはC. VIIIによるという。
**作用:**斜角筋群は肋骨を挙上し、あるいは肋骨が固定されているときには、頚椎を屈曲または回旋させる。
変異: **前斜角筋:**完全に欠如することがある。起始が第2頚椎にまで及ぶこともある。鎖骨下動脈がこの筋を貫通するか、あるいはその前方を通過することがある。まれに横隔神経がこの筋の中を一定の長さ走行する。 **中斜角筋:**完全に欠如することがある。起始の数が通常より少なく2個になることがあるが、第3頚椎からの起始尖頭が欠けることは稀である(Krause)。停止が通常よりも下方の第2肋骨、さらには第3肋骨にまで及ぶことがある。 **後斜角筋:**全部または一部が欠如することがある。停止が第1肋骨に見られることもあれば、第3あるいは第4肋骨にまで及ぶこともある。