骨の外形、構造、諸部分、および一般的名称

骨は外形によって次のように分類される。

  1. 長骨(Ossa longa):体肢の多くの骨がこれに属する。この種の骨は1つの(Corpus)、すなわち骨幹(Diaphysis)と、2つの通常太くなっている骨端(Epiphyses)からなる。骨端はしばしば丸い(Capita)の形を呈する。骨幹の内部には1つの大きな空所があり、これが骨髄を収める髄腔(Cavum medullare、Markhöhle)である。そのため、このような骨を骨状管ともいう。この型に属するすべての骨では、1つの方向への伸びが支配的である。
  2. 扁平骨(Ossa plana):肩甲骨・寛骨・多くの頭蓋骨のようなもので、この群の骨は2方向(2次元的)に特に広がっている。
  3. 短骨(Ossa brevia):手根骨や足根骨のようなもので、3方向に向かって一様に広がっている。
  4. 含気骨(Ossa pneumatica):篩骨・蝶形骨・前頭骨・上顎骨・口蓋骨のようなもので、空気で満たされ、粘膜で裏打ちされた空所を持っている。
  5. 不規則形または混合型の骨:これには上記3つの分類に当てはまらない骨がすべて含まれる。

骨は柱・環・管・函・円蓋などさまざまな形を作る。この点について特にRK176(ヒトの骨格) に注目されたい。骨は相寄って、受動的運動を行うのに非常に適した一組の「てこ」(Hebelsystem)を構成しており、能動的運動器官である筋にとっては広範な作用面となっている。また骨は環や管や函の形をなして、その中に囲まれた器官の保護枠としての役目も果たしている。この役目は骨にとって最も重要なものであり、骨格系の本来の使命を示すものである。

RK176(ヒトの骨格) を見るにあたっては、体の中での骨格の位置をあらかじめ知っておく必要がある。骨格は結合組織内にあって、骨と一定の位置関係にある他の諸器官系の間に存在している。

ここまでは骨の外観に注目してきた。確かにこの表面の状態は重要であるが、これに劣らず内部の状態も軽視してはならない。

骨を割ってみると、固い実質と海綿状の実質とが骨を構成していることがわかる。この固い実質が緻密質(Substantia compacta)、すなわち皮質(Cortex)で、部位により、また骨によって、強く肥厚していることもあれば、薄い皮質の層を形成するにすぎないこともある。海綿質(Substantia spongiosa)は骨の内部を占め、そこで著しく発達していることもあれば、極度に減少していることもある。骨の内部にも緻密質の突出部や島があり、これをBinnendura(内部の固いものの意)という(H. Meyer)。

このように管状骨の骨幹は非常に緻密な、象牙様の物質からなる。これに対して両骨端は、網状につながり合った、しかし一定の方向に走る細かい梁や板でその内部が構成されており、端に行くほど薄くなる緻密質の皮膚で、その表面が囲まれている(RK157(管状骨の縦断面)、158(晒した大腿骨の内腔の金属鋳型) )。

扁平骨では緻密質がしばしば2枚の板をなし、頭蓋骨では外板(Lamina externa)および内板(Lamina interna)と呼ばれる。この2枚の板の間には海綿質があって、頭蓋骨では板間層(Diploë)と呼ばれる(RK178(扁平骨) )。多くの扁平骨は薄いところでは板間層を欠き、2枚の板が癒合して1枚になっている。比較的小さいいくつかの扁平骨は、結局たった1枚の薄い板から出来ているにすぎない。

短骨は管状骨の骨端と同様に海綿質でできており、薄い緻密質の皮質で包まれている。混合型の骨では、緻密質と海綿質とが、さまざまな場所で、さまざまな具合に用いられている。海綿質は髄腔と同じように、柔らかく、しかも互いにつながり合った多数の空所を満たしている。つまり海綿質の間の空所が赤色骨髄を宿しているわけである。

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[図176]ヒトの骨格—前面図(1/9)

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[図178]厚い板間層をもつ扁平骨の横断面(前頭鱗、冠状縫合付近、正中線から2cm右)×3倍

緻密質と海綿質とは形の上では対照的な存在である。しかし両者は構造においても機能においても互いに異なっていない。骨という全体が堅固さを目指して構築されているのだが、海綿質もこの課題に関与している。この意味において、海綿質は圧縮された緻密質であり、緻密質はほぐされた海綿質であるといえる。この関係はそれぞれの骨において構築系の中での位置に応じて、特殊な様式で現れている。この非常に注目すべき関係については「骨の内部構築」の項を参照されたい。

小さい血管や神経が、骨表面の多くの場所で骨質に侵入する。そのほかに、比較的大きい骨では割合に太い血管が1本、ときにはそれ以上、決まった場所で侵入する。これが栄養動静脈(Aa. et Vv. nutriciae)で、栄養孔(Foramen nutricium)を通って栄養管(Canalis nutricius)に入り、ついで骨髄実質に達する。

含気骨(Ossa pneumatica)においては、空気を容れている空所の1つから、粘膜が骨の内部へ侵入し、この骨を中空にし、軽くしている。

骨格を形成する各々の骨は体幹の骨体肢の骨とに分けられる(RK176(ヒトの骨格) )。

体幹の骨格には頭の骨と胴の骨とが含まれる。

体肢の骨格は上肢帯と下肢帯の骨、および自由上下肢の諸骨からなる。

胴の骨格は脊柱・肋骨・胸骨からなる。同様に頭の骨格は脳頭蓋(Hirnschädel、Schädelkapsel)と顔面頭蓋(Gesichtsschädel、Gesichtsskelet)とからなり、後者にはまた舌骨と鼓室小骨が含まれる。

骨格を構成する骨の数は年齢によって変化する。初めは互いに分離しているいくつかの骨が、骨化の進行につれて融合して1つになる。

中年において見られる骨の融合・分離の状態をもとにして、それぞれの骨を数えると次のようになる。

脊柱は24の分離した脊椎と仙骨と尾骨からなる。仙骨は5つの真性の脊椎の癒合によってできている。尾骨は真性の脊椎の退化したもので、成人ではそれが5ないし6個あって分離しているが、年をとると互いに癒合する。尾骨は発生の初期には少なくともおよそ9個の脊椎原基を持っていたが、そのうち末端部のいくつかは間もなく癒合してしまうのである。

胴の骨格には、そのほか12対の独立した肋骨と、胸骨とが属する。